内容説明
料理に生きる「包丁侍」を描く話題の時代劇。
気の強さが仇となり1年で婚家を離縁された娘・春。しかし彼女は優れた味覚と料理の腕を持っており、それを加賀藩の料理方である舟木伝内に見込まれ、息子の嫁にと懇願される。一度は断るも、熱心な伝内のアプローチにより嫁入りを承諾する春。江戸から長旅の末、加賀に到着した彼女を待っていたのは、4つも年下で、料理にはまったく関心のない夫・安信だった。料理方の家に生まれた安信だったが、武士は武道に励むものと、自ら「包丁侍」になることにはまったく乗り気ではなかったのだ。
嫁入り早々、舟木家では親戚方に料理を振る舞い、その出来を吟味する「饗の会」が開かれた。それは安信が舟木家の後継者にふさわしいと認めてもらう絶好の機会だったが、安信がつくった料理はまったく不評で、それを見ていた春がこっそりつくりなおすと、その美味しさに今度は集った一堂は賛辞を呈する。そのことを知った安信は春に怒りをぶつけるが、春はそんな安信に包丁の腕比べを申し出る。それは春が勝ったら安信に料理指南を受けてもらう、安信が勝ったら春と離縁するというものだった。包丁勝負は春の勝利に終わり、安信は春から料理の猛特訓を受けることになるのだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
115
所詮、包丁侍だ。と、のたまっていた若き次男坊が、立派な包丁侍へと変わっていく物語。それが、古狸とされる姉さん女房に導かれて腕上げる。単純明解な物語であるが、くっきりとした筆致と描写で、分かりやすくテンポ良く進み、内容と合間って爽快な物語となっている。ラストは、いささか現代調で違うような気もしたが、気持ちよく読了。澪つくしシリーズにも通ずる読後感だった。但し、ノベライズ本なので、そこのところの甘さと浅さはある。2015/11/13
七色一味
58
読破。映画のノベライズ版とうこともあってか、全体的にあっさりとした仕上がりで「読み応え」と言う面では物足りなさがありました。映画は見ていないのでなんとも言えませんが、物語として見ると、あっちこっち掘り下げの足りない部分やあまりにも省略されすぎてる部分があったりしますが、さらりと読めてそれなりにいい感じだったので、まぁ、よしとしましょう(笑)2014/02/01
りょうこ
49
脚本ノベライズなのでさっくり読み終わりました。ってかちょっと物足りないかも。でも映画の雰囲気は味わえたので内容は満足。映画見たいなぁ。2014/06/21
スズメ
41
微妙な味が解る人は凄い。利き酒・ソムリエ・・(酒関係ばかりが頭に浮かぶけど)春ちゃんのように味に敏感で心も豊かな人が作るお料理は、食べた人を幸せにするのでしょうね。私もそんな人になりたい。読後感も心が暖かくなる、陽だまりのような本でした。2013/12/10
しおり
29
映画のノベライズ。本意でない台所役に不満な態度の夫安信を支える妻 春の愛情が終始微笑ましかったです。夫の命とお家を命をかけ守った春、その度胸は愛すればこそ出来たことでしょう。安信も潘政や家に振り回され、気の毒とも思えます。その夫を手のひらで転がすようにして仕え、頑なな心を和らげた春は素敵な女性でした。2023/11/06