内容説明
「それは、乳房であった」男の独白は、その一文から始まった――ミロのヴィーナスと衝撃的な出会いをはたした幼少期、背徳的な愉しみに翻弄され、取り返しようのない過ちを犯した少年期、サイエンスにのめりこみ、運命の友に導かれた青年期。性状に従った末に人と離別までした男を、それでもある婦人は懐かしんで語るのだ。「この人は、女性がそんなに好きではなかったんです」と。アニメ『ファンタジスタドール』前日譚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
た〜
65
わけの分からぬまま話が始まり、わけの分からぬまま話は展開し、わけの分からぬまま話は終わる。これはアニメを見ていないからなのであろうか?ただひとつ言えることはこの著者らしい幻惑され通しとなることかな。笑わせる要素が見当たらないのはらしくないけれど2013/09/22
雪紫
61
再読。ガチとヤンデレ達が暴れ回った2013年夏百合アニメのカオス担当「ファンタジスタドール」の前日譚という名の開発者の人生譚。幼少より「女体」に強い興味を持ちながらもその考え自体を嫌悪し、最後までそれを解き放てなかった学者の文学。科学要素抜きにすれば明治や昭和が舞台でも違和感ゼロ。また作中の現象の科学的解体というアプローチと年表で十分異色作だけど、オチ含めやっぱりギャップが(苦笑)。内容を知らせないまま読ませればアニメ視聴者もわからないだろ。しかしこの開発者の心、ささら達が知ればボコられること確実(笑)。2022/08/10
miri
58
アニメ『ファンタジスタドール』の前日譚ということですが、アニメを見ていないのでこの作品だけの感想を。少年の時分より女体の虜になり、発散できぬまま残念な大人になってしまったが、天才的な頭脳を持っていたので理想のお人形を作り上げてしまった研究員が主人公。暗くねっちょりとした執着の描写は凄いです。大多数が距離感を持って女体と接することができるのでしょうが、たまに適度な距離感を保てない方もいらっしゃるのでしょうねという話。心の内に秘めてるからまだいいけど、実際こんな人いたらドン引きだよ~(笑)2020/12/06
harass
50
深夜アニメのメディアミックス小説。楽しんで見ていたアニメの小説を贔屓にしている作家が手掛けたと聞いて驚くが本屋でぱら見して困惑。ようやく読む。あの狂気のアニメとはまったく違うもので、シリアスでなぜに太宰文体なのかと首をひねっていたがたしかに人間失格。おっぱい星人。途中にちょっとした異化の仕掛けがある。昭和の生活を思わせる設定かと読んでいくと途中で驚くものがでてくる。現在でもそんな技術は実用化されてないはず。この作家らしいなかなか面白い作品。アニメと違いすぎる疑問は、アニメの監督谷口悟朗の解説で少しは納得。2017/04/08
星野流人
41
アニメーション「ファンタジスタドール」の前日譚。……とはいったものの、アニメーションそのものは観ておらず、野崎まどという作者買いだったわけですが。確かに野崎まどさんらしさはあって、ストーリーもなかなかおもしろかったものの……うーん、MW文庫等の他所でよくやるような意外性や驚きが感じられなかったのは、ちょっと残念だったかもしれません。「ファンタジスタドール」を観ているという視点で読むとどういった感想を抱くことになるのか、ちょっと気になってしまいますね。 6/10点2013/09/29