内容説明
生と死のはざまでほとばしる情念。これが北方謙三だ。 定期的に食事はするが、踏み込まない。響子とは二十二年、そうしてきた。死期が近いと告げられるまでは。硲(はざま)冬樹は画家。売れない絵描きではない。横浜に数軒の酒場を持つ。硲の絵を望んだ響子。消えゆく裸身をキャンバスにして、硲は鑿(のみ)を手にした硲は消えない絵を刻みつけようとする。男と女、北方ハードボイルドの到達点!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
65
カッコいい小説やなー。横浜で四軒の酒場を営み、夜は焼酎のお湯割りしか出さない婆さんの店で飲んだくれる男は、実は世界的な画家。けれども元チンピラを自認する彼は、フィリピーナの彼女を守ってやくざと揉めたチンピラを助け、、、北方ハードボイルドの主人公ですからMeToo案件やらかすんですが、それでも生き様としてカッコいいと思える。平成の後半にこのハードボイルドを成立させた北方先生マジですげえっす。2022/05/20
GAKU
33
久しぶりの御大北方作品。‘83年刊行の「檻」に衝撃を受けて以来、一時読みまくりました。今作もお見事!北方ワールド炸裂!三十数年来全くブレない作風。簡潔にして余韻のある文体に酔いしれる。やはり、北方は良いです。私にとっては現代版ハードボイルド物が氏の真骨頂と思っております。“「三田村」「何でしょうか?」「気に入った。その消え方」「お気に召していただける、と思っていましたよ」咳が出た。血が、口から噴き出したようだ。”読友さんのレビューにもありましたがヤクザの三田村、カッコ良すぎ。存在感半端ないです。2015/11/08
ブラックジャケット
17
北方謙三というとハードボイルド小説から始まり多彩な作品群へ進化した。2010年の出版で著者にとっては後期の作品。ハードボイルドな味を保ちながら、横浜の下町の歓楽街のブルースを感じさせる。女性に対する愛や欲望は昭和感で限界をみせるが、削り取った文体で主人公硲のスタイリッシュな言動を描く。有名な画家でありながら、酒場を四軒経営する。自己韜晦のポーズが夜の街に映える。しかし事件が硲を束縛する。対ヤクザ戦も激しさを増すが、余命幾ばくもない響子の背中に刺青を彫る耽美的な世界に没入する。最期の場面で海の横浜を納得。 2021/12/16
ume 改め saryo
14
ハードボイルドなんて読んだのなぜだろう? 毎回思う。 おそらく5冊も読んでいないと思う。 男社会の安いヒロイズム。 でも不思議といい言葉が、深い言葉が1つはある。 だからまた読んでしまうんだろう。2013/12/16
タナー
13
何気なしに映画のサイトを見ていたときに目にした予告編。カッコいいと思った。映画のタイトルは「影に抱かれて眠れ」....ハードボイルドっぽい。気になってチェックしたら、原作が北方謙三氏。残念ながら近場で映画化作品を見れない。それならばということで、この本を入手した。読み始めた瞬間に、自分がこの物語の真っ只中にいるようなリアルな描写。北方氏ならではのキレのある文章、小気味の良いテンポ。殆ど一気読みであった。日本の作家では、こういう本物と言えるハードボイルドを描けるひとってなかなかいない。サイコーの一言。2019/10/07