内容説明
14世紀のモンゴル帝国解体後から、東アジアに近世の国家体制が誕生する17世紀までのシナ海域に、生まれては消えた「海上王国」の歴史。日本でも中国でもない、この「蜃気楼王国」に生きた人々――「日本国王」足利義満、鄭和の南海遠征、王直と倭寇、キリシタン小西行長と朝鮮出兵などをめぐる史料を分析し、海上政権との抗争のなかから、近代につながる近世の「陸の国家」が生まれてくる過程を追う。海からみた新しい世界史。
目次
序章 蜃気楼の王国
第1章 足利義満と法悦の王国
第2章 鄭和とムスリムの帝国
第3章 王直と海洋商人の王国
第4章 小西行長と神の王国
第5章 鄭成功と未完の海洋王国
終章 蜃気楼王国の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maqiso
4
義満は日本全土を支配しているように見せて明に朝貢した。ムスリム出身の鄭和は明で頭角を現し、南シナ海域にムスリム華人のコミュニティを建ててインドとの交易を促進した。中国への密貿易が盛んになると陸上商人と連携した組織的な海上勢力が現れた。王直は五島を拠点に王国を築こうとしたが明に破れ、鄭成功は大陸の政権を受け継いたが清に押され、台湾の東インド会社を攻めて講和条約を結んだ。中国の政策に日本や東南アジアの戦乱や西洋の商人も絡んで面白いが、史料が少なくてどこまで確実かは怪しい。2022/04/09
Joao do Couto
3
中世から近世にかけて海上支配を基盤とする王国が東アジアで形成された、というストーリー。ポルトガルやオランダの海上帝国論にたいするアンチテーゼとして読めます。また海域世界をとおして、アジア的とか、西洋的とか、という見方を修正してくれます。ただ、小西行長とその王国構想はいまいち説得力に欠けている気がしました。2013/11/01
とし
2
中世のシナ海域の300年ほどの歴史を、5人の「英雄」を軸にして概観できる良著。すごい読み応えがあった。海賊衆が好きなので、王直のことが知りたくて読んだのだけれど、中国はもちろん、東南アジアの中世史なんてほとんど知らなかったから、何を読んでも面白かったし勉強になった。海域アジア史というのは非常に新しい研究分野だと思う。それこそ網野さんが海民に新視点を当てて以降のことなんだろう。台湾や中国や朝鮮や、他の東南アジアの国々でも、どんどん研究が進んで、その成果が各国の研究者の間で共有されるようになれば良いなぁ。2014/03/04
Oltmk
1
上田信氏によるかって足利義満・鄭和・王直・小西行長・鄭成功のかってシナ海域に交易などを通じて海洋王国を建設しようとした5名を描く専門書。上田氏を自覚している通り、歴史学で相手にされない一種の英雄史観が本書には込められており、上田氏の小西行長の観方や分析などは私見が過ぎるのではと思うため注意が必要。ただ、かって存在した東シナ海域への交易などのロマンを感じる人間にとっては必読の書であると思います。羽田正氏による「東インド会社とアジアの海」で描かれたポルトガルの興亡も本書で指摘されている蜃気楼王国なのではないか2018/06/11
MORITA
1
あったかもしれない「海の国家」。歴史の教科書は今ある国家の視点から描かれるけど、地域史という通史があればこんな形になるのだろうか。今の国の形は絶対ではないことを感じる。2015/12/31
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