内容説明
いまウォール街では、既存の金融人とはまったく異質な人々が勃興している。「クオンツ」と呼ばれ物理や数学のエキスパートでもあるトレーダー達は、複雑怪奇な市場をいかに予測し、成功しているのか? 物理学者はいかにして「予測不能」な市場を読むのか? いまウォール街では、従来の金融業界とはまったく異質な “クオンツ”と呼ばれる人びとが席捲している。物理学や数学の博士号を持つが、金融の専門家でも経済学者でもない。2008年の金融危機後もなお、高度な理論を駆使して圧倒的なパフォーマンスをあげる彼らの手法には批判の声もある。だが、クオンツたちは本当に悪者なのだろうか? そんな小さな疑問をきっかけに、好奇心に導かれて探求を進めていった著者は、思いもかけない深遠で魅力的な物語を発見していく。そこには、一見するとまったくランダムに見える株価や相場の動きを予測すべく全力を傾けてきた、数々の天才物理学者・数学者たちの姿があった――理論的思考と人間的洞察を兼ね備えた視点でウォール街の最先端を読み解き、経済と金融の未来を展望する、気宇壮大な科学ドキュメンタリー。
目次
イントロダクション 不可能を可能にした男
第1章 パリの孤独な天才
第2章 鮭の泳ぎと株価のゆらぎ
第3章 海岸線の長さはどれくらい?
第4章 ディーラーをやっつけろ!
第5章 物理学がウォール街にやってきた
第6章 サンタフェ街道の予想屋たち
第7章 ドラゴン・キングの足音
第8章 新たなるマンハッタン計画
エピローグ 経済の未来を救うために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
36
友達に貸して戴いた本。人間には予知できないものが二つ、ある。自然と経済だ。この本は、物理学の論を使って、経済を読み取ろうとした者たちのドキュメンタリーである。株価の動きを量子学での粒子の動き(ランダムウォーク)に見出し、「海岸線の長さはどれくらい?」でリアス式海岸などの複雑な海岸線に合わせて定規を用意し、測定すると測り残しが無限に出てしまい、距離が長くなってしまうという論や株価の暴騰・暴落に地震予測や労働組合やデモ活動のパターンで当て嵌めるという使用方法は中々、面白いです。2014/10/07
TATA
34
ギャンブルでの必勝法を求めて確率論を。そこから株価のランダムウォークを解き明かしCAPMとリスクフリー仮説へ。統計学と物理学のエッセンスを吸収し今の金融工学はあるわけです。なのでその金融工学の想定を超えた時にクラッシュは起きるわけで。経済と金融はこうやって発展したと理解できる一冊です。クラッシュに怯んではいけないわけなんでしょうね。2023/10/08
baboocon
27
高度な数学や物理学の理論を駆使して金融界で利益を上げる「クオンツ」の成り立ちを、経済学の進化に功績を残した物理学者たちを時代を追って辿っていく。ブラックやショールズなどはお馴染みだが、100年以上も前のバシュリエという人物が今でいう金融工学の先駆けだったとは知らなかった。2008年の金融危機でデリバティブの危険性が騒がれたけれど、物理学を金融に応用すること自体ではなく使う側の悪意が問題であり、特定の理論が通用するのは限られた状況下であることを認識した上で使う節度が求められるのだな。2013/09/10
KAZOO
26
ウォール街のファイナンスに関するテクニカルツールを使用した人達に関する読み物あるいはドキュメントという感じです。その具体的なツールなどの解説はないので読み物として読めばいいと思います。割り切ってしまえばそのようなこともあるのかという感じです。理論的なものを期待すると肩透かしを食います。まあ面白く読みやすかった。2014/09/05
壱萬参仟縁
18
1970年にサミュエルソンが第2回ノーベル経済学賞受賞の理由は、経済学に数学を取り入れたこと(45頁)。行動経済学は、周知のように、個人や集団の心理から経済を読み解く学問(75頁)。市場は心の機微に関わる。都留重人先生は、市場には心がない、とされたが、ここは一つのポイントだと思う。オズボーンの心理学は一度勉強してみたい。アインシュタインと侃侃諤諤というのは凄みを感じる(77頁)。学者のプライド! ブラックという人は人間関係論から物理学へシフトしていったが、文転ではなく、理転であることが尊敬できる人物。2014/02/25
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