内容説明
被ばく治療の第一人者による、もっとも信頼できるガイド。チェルノブイリ、東海村、福島など、放射線が絡む重大事故の現場にいち早く駆けつけ、被ばく者の救護活動を行なってきたアメリカ人医師、ロバート・ピーター・ゲイル博士。一般市民が放射線について正確な知識をほとんど持たず、誤った情報が流布していることを憂慮した博士は、わかりやすい啓蒙書の必要性を感じ、ジャーナリストのエリック・ラックスとともに本書を執筆した。どの種類の放射線を、どのくらいの線量浴びると危険なのか? 福島第一原発事故の被ばく者の今後は? 携帯電話や電子レンジの電磁波は安全か? X線検査など医療処置で浴びる放射線については? これから原発とどうつきあっていけばいいのか? 数々の切実な問いに対して、これまでの治療経験と医学の立場から言えること、放射線利用のメリットとデメリットを、ゲイル博士が基礎から懇切に解説する。放射線に関する知識を整理・補強し、利益とリスクを冷静に見据え、より適切な判断を下すために。ポスト3-11を生きる私たちにとって、いまこそ必携の1冊。
目次
第1章 リスクの評価
第2章 放射線の発見から今日まで
第3章 放射線の現実
第4章 放射線とがん
第5章 遺伝性疾患、出生時障害、照射食品
第6章 放射線と医療
第7章 爆弾
第8章 原子力発電と放射性廃棄物
第9章 まとめ
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
11
ラドン222は肺がんで亡くなるアメリカ人の死因の大きい放射性核種(32頁)。原爆被爆者の事例では、白血病は放射線によって引き起こされたものが多い(69頁)。核は放射能と思えば、核拡散防止条約にも違反するような原発輸出などもってのほかであろう。「バイスタンダード効果」とは、放射線による悪影響を受けた細胞が放つ物質によって、被曝していない付近の細胞に生化学的変化を引き起こすこと(177頁)。朝永院長による解説で、フクシマは我が国では依然進行中の問題(268頁)であって、アンダーコントロールかは必ずしも言えず。2014/01/17
ZEPPELIN
8
我が国においては発電方法ばかりに焦点が当てられ、それ以外が疎か。例えば、喫煙によって濃厚な放射性物質が肺に取り込まれること。原発反対派がヘビースモーカーであったらただのお笑いである。また、CTスキャンを受けるとして、その被爆量は認識されているか。そもそも、原子力以外の発電方法における危険がかなり過小評価されている。何事もメリットとデメリットを比較検討することが重要で、また政策を決定する側の政治家にも判断する側の国民にも科学的知識は必須。賛成にしろ反対にしろ、無知・無関心が最も厄介で危ない2015/09/26
或るエクレア
7
原発だけではなくて医療用放射線や原爆、食品への照射、X線荷物検査などありとあらゆる放射線について広い視野で学べる一冊。またリスク計算でも幅広い分野から数値を持ち出してきていて相対化しやすく分かりやすい。所詮人間の脳は感情優先にできているけど、それを乗り越えてクリアな思考にたどり着くための踏み台にはなりそうだった。著者がアメリカ人なので日本の原子力機構が福島事故後に決めた政治色の強い数値基準などが出てこなくて読みやすい。2015/09/05
西澤 隆
4
「原発の放射能漏れなんて心配すんな」と恣意的に読むこともできれば、逆に「まだ開発されていない技術がないと完全な廃炉ができない」と放射線を手なずける難しさを痛感することもできる読み手の感受性を問う本。統計的データを元にした「おそらくこうである」や「わからない」をきちんと提示した上で、放射線のメリットと怖さ、がんのリスクへの影響など、テーマ毎にまとめている本書からは「わかった!」という明快な回答はない。明快すぎる提示の怪しさにすがることなく自分で考えるための判断基準のひとつとして、釈然としないまま読了したい。2013/12/20
のの
3
政治色なく冷静な科学的書。出だしのブラジルの事件は知らなかったし、原爆と福島は放射線ではやはり大きな事例なんだなと思った。2018/07/07