内容説明
なぜ日本は世界を敵に回す戦争を起こしたのか? 今の日本人は、その意味を正しく捉えられているか? わかりやすい「欺瞞的な説明」を排し、軍事面や外交面にとどまらず、政府や日銀の政策を軸に「あの戦争」を再考。財務出身官僚が、新たな視点で描く戦前日本の「失敗の本質」。
目次
第1部 持たざる国への道(あの戦争はなんだったのか 日本の孤立を招いた上海事変 中国戦線の実態 「持たざる国」への道 予算制約の有名無実化 ほか)
第2部 軍部が理解しなかった金本位制(江戸の通貨制度 江戸の金銀複本位制から明治の金本位制へ 金本位制の番人だった日本銀行 英米の中央銀行―悩み多き金融制度の守護神)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
13
なぜ戦争が起きたのか、という問題提起に対して、軍部の経済的敗戦とその結果として起きた国内の貧窮が原因だとする。日米開戦に関してもそれまでの国債情勢から日独伊ソが結ぶことでアメリカも容易に手が出せないとする楽観論があったことにより、経済力格差に目を瞑ることになった。そして、この読みは外れたのは周知の通りだ。当時以上に国力の差があった日露戦争に勝利できたのは、英国という後ろ楯と財政の限界を弁えた人物のおかげである。太平洋戦争にはその両方が欠けていた。2016/02/28
koheinet608
8
最近思うのは今日本は「戦時下」にあると。また無謀な「戦争」へと突入しているのではないかと。以前の戦争は「敵]がいましたが、今回の戦争は「敵」がいません。以前はみんな貧しく国から団結するよう強制されましたが、今回は国民間で経済的心理面での2極化が進み、互いに繋がることも、団結することもできなくなっています。日本は自力で「変化」することができません。必ず外部要因で「変化」する国です。以前は黒船、GHQでしたが、最近は原発です。日本の現在の「変化」と「方向性」は、気味が悪いほどに太平洋戦争時と似ています。 2017/12/31
ピラックマ
5
前半の「持たざる国への道」は圧巻の面白さ。経済の視点から何故破滅へと転げ落ちていったかを克明に追う。陸軍の経済音痴さ加減と蒙昧な大衆。まさに貧すれば鈍する。満州に工場建てまくって国内製造業が不振になったとか今と同じだし、左翼が統制経済に対し社会主義の予行演習になると賛成していた話等興味深いエピソード満載。後半はもっと円元パーに絡んで行くのかと期待させるも歴代日銀総裁の評伝の域を出ず残念。2013/08/31
しんさん
4
財務省官僚による敗因分析。めちゃくちゃ面白かった。経済、通貨制度を理解しない軍が、日中貿易の5%しか富を生まない満州経営にのめり込んだことで国内が貧しくなり、「円元パー政策」で追い打ち→貧しいのは大国のブロック経済が原因だ→対英米感情の悪化。開戦。聞いていた順序が逆だ。2023/10/07
Mitz
4
日本は持たざる国“だった”のではなく、軍部の経済原理の無理解により持たざる国に“なった”。…以上が、著者が主張するあの戦争の真因だ。先の戦争はこれだけが原因と言える程単純なものであるはずがないが、なるほど、見落としがちな大事な側面だ。徳川時代の通貨制度まで遡って考察している事も理解を助けてくれる。…加藤陽子女史の解説に「理解されやすいが欺瞞的な説明に飛びつき、理解されがたいが構造的な真因に耳を貸さなかった国民と、国民に正直でなかった国家」とある。日本人の遺伝体質とも言えるこの弱点、実に耳の痛い話である。2016/01/13
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