内容説明
関西人はなぜ声が大きいのか? 声が大きいのではなく声が高いのだ。二千万話者を擁する関西弁は発音の高低を駆使してこそ成り立つ言語なのだ――。強弱アクセントではなく高低のアクセントを導入することでその発音法則を見出し、文法構造によるイントネーションの変化など、標準語とは異なる関西弁独自の体系を解明する。読んで話せる関西弁教科書。めっちゃ科学的。(講談社学術文庫)
目次
第1講 関西弁との出会い
第2講 二〇〇〇万人の関西弁
第3講 関西弁の音声学
第4講 関西弁の統語論
第5講 関西弁のボキャブラリー
第6講 関西弁の歴史
第7講 いくつもの日本語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
107
「関西弁」についての本というのは、室町時代から書かれている。無論現代に至っても、通俗的な本も多い。それらの中では「アクセント」と「イントネーション」の差異や「語彙」と「活用による変化」などが不分明であり、単なる雑学書を出ぬものが多い。無論、この本に置いては「音声学」「統語論」そして日本人そのものの伝来が声調に反映しているのでは無いかと、極めてダイナミックな結論に達している。そして標準語は統一国家を作出するにあたって作られた「ピジン日本語」だそうな。普段使う関西弁の有り得ない複雑さに驚異を覚えた。2022/10/08
1.3manen
21
2004年初出。言語の本質は音である(40頁)。関西弁と標準語を区別する最大の要因(70頁~)。関西弁はどうもアクセントの位置が異なることがわかる。それが平板な音の日本語とは異質感を生んでいるかのようである。関西弁動詞の活用(79頁)。ふつうの文法書よりも面白いじゃない? 本当に関西地方に住むのなら、真剣に勉強したくもなる本。カ変革動詞現在否定形の地域別来ないの事例(118頁)。微妙に違うようである。東大では1年生、京大では1回生と呼ぶようだ(198頁)。2014/12/16
魚京童!
13
言語としての関西弁。多様性の世界で、世界と接続して、話者が少なくなってる。これは保存しなければならないのではないか。関西弁を残さなければならない。そんなことを言い始めたら笑っちゃうけど、笑えないよね。何を残すのか、何が残るのか。そこに意思は介在しうるのか。難しいよね。2024/05/13
猫丸
11
語学は地道な努力なしに上達するものではないな。関西弁スピーカーになりたければ、やはり先生についてレッスンを受けるのがよいのだろう。本書は音の高低を記号で表現している。文字を見ながら小声で「なんでやねん」などと発音練習してみたものの、語彙ごとにおぼえなければいけないとなると、ちょっとお手上げだ。10年くらい関西に住んでみないとダメか。著者の指摘では、日本語初心者にとって関西弁のほうが学習しやすい面もあるとのこと。標準語では複雑きわまるさまざまな敬語も、関西弁では基本的に語尾に「はる」と付ければよい。2022/03/14
ネムル
8
dialectでなくて、languageとして関西弁を扱っている。その言語体系の扱いとして、強弱でなく高低のアクセントで音声を解説し、また中学英語ないし古典語の授業のように動詞の五段活用や否定や使役形による語尾やイントネーションの変化の構造などを明らかにしている。しかし、「本書を読んで、関西弁ネイティヴに近い関西弁を話せる人が誕生することを期待している」とか、こう話すと「関西弁フレーバーが出る」みたいな文章にいらっとくるのは、自分が関西弁を言語として扱ってないからなのか……。2013/07/31




