内容説明
経済崩壊、貧困拡大、環境汚染、人口爆発……。メディアを席捲する知識人は、われわれ人類は今にも破滅に向かうと日々嘆く。だが実のところ、こうした悲観的未来予測は200年前から常にあったのだ――ほとんど外れてきたにもかかわらず。各種データを見れば、事実はまったく逆だ。「今」ほど最高の時代はない。そして人類の生活レベルは地球規模でなお加速度的に向上している。なぜか? 有史のある時点で、交換と分業が生まれ、それによって個々の知識が「累積」を始めたからだ。石器時代からグーグル時代にいたるまでを、ローマ帝国、イタリア商人都市、江戸期日本、産業革命期英国、そして高度情報技術社会などを例に、経済、産業、進化、生物学など広範な視点で縦横無尽に駆けめぐる。東西10万年をつうじて人類史最大の謎「文明を駆動するものは何か?」を解き明かす英米ベストセラー。
目次
プロローグ アイデアが生殖するとき
第1章 より良い今日―前例なき現在
第2章 集団的頭脳―20万年前以降の交換と専門化
第3章 徳の形成―5万年前以降の物々交換と信頼と規則
第4章 90億人を養う―1万年前以降の農耕
第5章 都市の勝利―5000年前以降の交易
第6章 マルサスの罠を逃れる―1200年以降の人口
第7章 奴隷の解放―1700年以降のエネルギー
第8章 発明の発明―1800年以降の収穫逓増
第9章 転換期―1900年以降の悲観主義
第10章 現代の二大悲観主義―2010年以降のアフリカと気候
第11章 カタラクシー―2100年に関する合理的な楽観主義
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
204
面白かった。ハイエク万歳な展開。ハイエクは尊敬しているのでこれは楽しい。人類が進歩を重ね時代を下っていく様子が描かれる。最近話題の未来に関する悲観論も一刀両断。これほど楽しい読書体験は、暴力の人類史以来。きわめて良本。悲観論ばかりの昨今、こういう楽観論は少なくなったが。きっと未来は明るいと信じさせてくれる。人類の社会は、トップダウンではうまくいかないこともあるんだね。イノベーションはボトムアップが良い。2018/04/16
アナクマ
34
人類史に対する楽観また楽観。よく集めたものだ。能天気な片張りも徹底しすぎるとむしろおっかない。◉外れた楽観論を集めても一冊できるはずだが、どのみち未来は分からない。本というものは支持/不支持の二択ではないので、例証の数々は「人類捨てたものじゃない」「本当にそうだったらいいけどな」などと是々非々で楽しく読もう。『楽しい終末』との読み比べも吉。◉私自身は、10年前よりも10年分余計に生きられたということを寿ぐ者だ。楽観派・悲観派いずれも何かしら希望の杖を握って歩んでいることに変わりはないはず。2019/05/16
赤星琢哉
34
人類の繁栄の源は「専門・分業」と「交換」。これは人類という大きな括りだけでなく、人が集まる組織・コミュニティにも当てはまる。また、世間一般的に良いと思われていることに対する的確な批判も面白い。例えばオーガニック食品の流行りや、地球温暖化が悪という風潮。「暴力の人類史」と同じく現在が一番繁栄(平和)と主張している。合わせて読むと(混乱するかもだけど)面白いかも。とても勉強になる。2018/05/17
くも
27
随分前に読んだのだが、『21世紀の啓蒙』(Sピンカー)を読んで思い出した。人類の発明と進歩発展を俯瞰して見せる。技術の発展は害ばかりで利益などわずかしかないと思いがちで、自然破壊や社会の変化の犠牲者ばかりに目を向けてしまうが、人類が今までに積み上げたものの大きさをまとめて実感すると、以下に無知な立場で批判していたか思い知らされる。2020/10/21
アナクマ
25
(p.157)この難問に対するスミスの答えは、次のようなものだった。社会が機能するのに慈悲心と友情は必要だがそれだけでは十分ではない。なぜなら人間は「つねに膨大な数の人の協力と援助を必要とするのにもかかわらず、一生をかけてもかろうじて数人の知己を得るのが精一杯だ」からだ。言い換えれば、人びとは友情の範囲を超えて、見知らぬ人と共通の利害関係を確立する。ポール・シーブライトの言葉を借りれば、人間は見知らぬ人を名誉友人に変える。スミスは利他主義と利己主義の区別をまんまと曖昧にしてのけたのだ。2016/12/31