内容説明
黒皮の長手袋をはめ、威風堂々としている「おおばあ」こと、ぼくのおばあちゃん。父さんのいないぼくは、おおばあと母さんに育てられてきた。おおばあの古い一軒家。おおばあが飼っている黒い日本犬、ぼくの親友のヤジロベエ。おおばあに教わった「呼吸(いき)合わせ」。眠り続ける少女。中学生になってからの少女と「再会」。ぼくは本当に「呼吸を合わせる」こと「生と死」の意味を知る。色鮮やかな「ぼく」の成長物語。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
54
不思議な力をもつ「おおばあ」とぼく。どうやらぼくにも不思議な力があるらしい…。少しファンタジックで優しく切ない物語。少年の成長する姿が爽やかです。初めての作家さんですが、これは今後、期待大ですね。読み終わって暖かい気持ちになりました。面白かったです。2016/04/20
ぶんこ
48
中指だけが短い「おおばあ」には不思議な力があった。孫の「緑(ロク)」にも力が伝わり、眠りつづける「美瓜(ミウリ)」を助けるが、その後も辛い事があると眠りの世界へ逃避。人の悩みを救う事の出来る力を持つという事の幸せと辛さ。おおばあには立ち向かう靭さがありましたが、ロクは大丈夫かなと心配になりましたが、天から父親が助けにきてくれました。何度も眠りの世界へ逃避するミウリ。大学生になったロクは、またしても助けに行き、ミウリに対する腹立ちから逃げ出しますが、思い直して助けに行く場面で物語は終わります。2016/05/06
ゆうゆうpanda
41
辛い体験をした少年少女は自分を守るために心に鍵を掛ける。声を失う、記憶を刷り替える、夢の世界へ逃げ込む。でも、そんな弱さを自分自身が一番嫌っていて、そのことが自分を更に傷つける。その傷を癒してくれるのが中指の魔法。「袖振り合うも他生の縁」ファンタジーには不釣合いな諺がこの魔法の正体なのではと思う。初代の使い手「おおばあ」。見事な食べっぷり、謎の黒い皮の手袋、威圧感たっぷりで歯切れのいい物言い。ラピュタのドーラを思い浮かべてしまった。人間の顔に置き換えれないまま夢のシーンへ。ジブリ…当たらずと雖も遠からず?2016/04/26
はつばあば
36
祖母の不思議な力を受け継いだ孫。古い一軒家に木々の庭。それだけで引き込まれる。夢の中に逃避する内容も幼い頃を思い出させる。現実を受け入れれてこそ成長していく。・・・いい本でした。2015/01/14
むぎじる
26
特別な力を持ったおおばあと、数学者の母を持つ緑(ろく)。現実との折り合いがつかず、眠ることで自分を守ることにしたミウリとの出会いや、おおばあの教えは、緑に「認める」ことを教えてくれたのかもしれない。嫌なことから目を背けたり、逃げてしまったら、楽しかった思い出さえなかったことになってしまう。受け入れて受け止めよう。思い出は消えてなくなったりしない。いつだって好きな時に取り出せるんだ。緑の成長物語。2013/12/18