内容説明
旧ソ連のグラーグ(強制労働収容所)で生まれ育った元KGB諜報員ターボ。ニューヨークで調査員として暮らす彼は、銀行の会長マルホランドから誘拐された娘の救出を依頼された。この時から因縁深い人物が次々と現われる。今はマルホランドと結婚している彼の別れた妻、KGB時代の同僚、彼をグラーグから救い出しKGBに入れた恩人。誘拐事件を探るターボは、やがて恐るべき陰謀を知る。巧妙に練り上げたサスペンス巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Cinejazz
13
旧ソ連のグラ-グ(強制労働収容所)で生まれ、語学力を買われてKGBに採用された経歴をもつ男(ターボ・ブロスト)が、妻子と別れて暮らすニュ-ヨ-クを舞台に、辛酸を嘗めたKGB時代の因縁を引きずる陰謀と対峙するハ-ドボイルド小説。 元KGB諜報員だったプーチン体制下のロシア、FSB(ロシア連邦保安庁)、オルガリヒ(ロシア振興財閥)、ロシアマフィア、FBI特別捜査官が複雑に絡むロシアの深い闇に翻弄され、緊迫感の充満する本書は、社会主義の圧政から逃れて生きる男の痛ましくも切ない人生の物語。2022/05/26
naotan
11
鮮やかな情景描写、魅力的なキャラクター造形、ロシア独特の台詞回し、どれひとつとっても文句なしの面白さで、一気に読み終えました。そして、登場人物としては一度も出てこないプーチンの存在感! 続編に超期待です。2013/10/27
emitaku
9
込み入ったプロットにたびたび置いてけ堀をくいながら、際立ったキャラの主人公、その生い立ちからアメリカ移住までの歴史的背景、彼をめぐる濃密な人間関係に惹きつけられて、満足の読了。くさーいことを承知で、今までにないニュー・ヒーローの誕生、とか言っちゃいたい。おもしろかった。次作もぜひ読ませてほしい。2013/08/01
chonta
7
タイトル買いした一冊。いい意味で期待を裏切られたかも。もっと暗くて重いのかと思ったんだけど。いや、実際グラーグでの過去とかソ連崩壊後のごたごたとか重い話がベースなんだけど、NYを舞台にある意味ナイーブなロシア人をアメリカ人が描いたせいか、読後感は重くない。主役のターボが言うロシアのことわざにいちいちニヤリとしてしまう。天才プログラマーの相棒フーズもいい感じ。髪ぼーぼーでデブなのに、美女をとっかえひっかえだったり。「ロシア人、ケチ、ピザ」と、よくしゃべるヨウム、ピッグペンも存在感ばっちり。2作目が楽しみ。2013/06/03
woo
6
かなり長い物語だが飽きさせない巧さが在るし、主人公がアメリカ型ハードボイルドとはひと味違う独特の存在感を醸し出す。やたら頑固だが人情味が在るところが中々イイ♪ プロットは緻密に組み立てられていて破綻は無いが、それ自体が主題ではなく、そこに内包される複雑な人間関係を描き出す為に構築されたプロットなので、ミステリーとしての洗練度は左程高いとは言えない面も^^;; しかし、主人公とそれを取り巻く登場人物の描き方が妙に印象深く、次作も絶対読もうと思わせるだけのものは在るので買って損無し♪2013/07/16