内容説明
歩いて宇宙に近い場所へ――
極限に挑むプロ登山家、初の著作!
二度も死にかけた男が、それでも挑戦を続けられるのは何故か? 超高所で生死を分ける「想像」の力とは? 地球上に存在する8000m峰全14座に登頂し、日本人初の“14サミッター”となった著者が、病弱だった少年時代からの歩みを辿りながら、難局を乗り越えるための哲学を明かす。読むだけで息が苦しくなるような迫真のドキュメント!
目次
第1章 もっとも宇宙に近い場所
第2章 組織で登る八〇〇〇メートル
第3章 決意と覚悟
第4章 新しい自分を生きる
第5章 14サミッターになった日
第6章 危険を回避する想像力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
126
日本人初の8000m峰全14座登頂者が語る登山の魅力。控えめで冷静な筆致から死の地帯で研ぎ澄まされた本能を働かせるフェアでストイックな姿勢が伝わってくる。特に感慨深いのはガッシャブルムIIからの復活劇、山頂での涙は自身や環境の変化と柔軟に向き合う彼のリセット術が結実した瞬間だ。予定が押すダウラギリIでも裏方への感謝を忘れない、功績を早速過去にした謙虚な彼を覆うのは負債からの解放感と未来への希望。「経験とは積み重ねるものではなく、並べるもの」—その隙間で広がる想像は危険を回避し、新たな楽しみをもたらすのだ。2021/05/30
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
45
竹内洋岳、プロ登山家。日本人初の14サミッター(8000m峰の完全登頂者)。「登山の哲学」とあるが、哲学めいた話ではなく、竹内さん自らが記した8000m峰への登頂記。ご自分で書かれているためか、凄い記録なのに淡々と書かれているのがかえって勿体ない。雪崩に遭遇し奇跡の生還。折れた肋骨で片肺を潰し、背骨にはチタンの保護具をいれるという大怪我を負う。それでも次々に挑戦していく姿はすばらしい。★★★【追記】先日テレビで彼の登山の様子が放映された。ベースキャンプでは、とにかく楽しむなど意外な面を見ることができた。2013/05/23
hatayan
36
日本人で初めて8000m峰14座に登った登山家の回想録。ヒマラヤの高峰「ガッシャブルムII峰」で筆者は雪崩に巻き込まれ、背骨を折る瀕死の重傷を負います。治っても元には戻らないことを受け入れ、以前とは異なる自分の体を正しく使えるよう、国内の山でトレーニング。医師からは「回復に5年は要する」と言われながらも、翌年再度挑戦して見事登頂を果たします。経験だけではヒマラヤには挑めない。経験と経験の間を想像で補い、未知の事象に対応していくのが登山の楽しみである。そして、リアルな想像は経験の中から生まれると説きます。2019/01/04
gonta19
36
2013/5/9 Amazonより届く。 2013/8/8〜8/12 日本人初の8000m超の14座を登った竹内さんの高地登山に対する考え方が綴られたエッセイ。単なる山好きが、プロ登山家を自称するまでの経緯が、丁寧に説明されている。下山するまでが登山である、とはよく言われることだが、活きた例として、まだまだヒヨッコ登山者である私にも大変参考になる。でも、書かれていたように、山に登る意味合いは人それぞれで良いんだろうな。山が好きであれば良いんだ。2013/08/12
たらお
24
ガッシャブルムⅡ峰での大雪崩の記憶のプロローグ。雪崩に遭い300m落ちる回想から話は始まる。落ちていく加速度と、落ちていく時間の長さ。流される感覚はなく、空中に放り出され、ときどき打ちつけられ、また放り出される。生きているからこそ話すことができる内容だが、仲間2人は亡くなり、本人も片肺は潰れ、背骨は破裂骨折、肋骨を5本折っている。危険と隣り合わせの未知なる世界は読んでいる分には楽しいが、また登ろうとする気持ちの理解はついてこない。きっと、山の魅力はきっと登った者にしか分からないものなのであろう。2018/08/09