内容説明
小説家の頭の中をめぐる冒険!冒険!
主人公は、「カタリテ」と名乗る小説家。書き出しで行き詰まり、書き続けることができなくなってしまう。そんななか、小説内の登場人物が、痺れを切らして「蝙蝠」に変身しながら新たな話を始めてしまったり、<南の鞄>という謎の巨大鞄から生まれた、過去形で予言をする「ソボフル」なる人物の壮絶な半生が突如長々と語られ始める。
一方、ようやく自ら「語り」を再開させることになった「カタリテ」は、自らの作品世界に入り込んだ後、南を目指し、<エッジ>という名の作中人物や作家たちが集う奇妙な療養所に辿り着くのだが――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅら
212
さっぱりわかりませんでした笑。吉田篤弘さんの話ってファンタジーっぽくて、でもオシャレでいい雰囲気ですが、これは支離滅裂系。なんかオシャレな薄いブルーのソーダみたいな印象ですけど、雰囲気だけで読んでいくのが良くて、まあ吉田さんは別の作品を読もうかな笑。「答えが出てもいないのに出たような振りをして、無理に答えを言おうとするから「AはAだ」でいいのに「AはAのようであってAではなく、しかしAのようだ」みたいなことを言う。ズルズルと、どこまでも。ヘビみたいにのたうちまわって。ときどきいやらしい下まで出して。」2024/06/10
ユメ
64
混沌たる小説。あらすじはとても語れない。物語とは、という壮大なテーマ。わけがわからないまま、翻弄されることを楽しんだ。刻々と変化する波打ち際のような小説。カタリテはひたすら圏外を目指すけれど、元々彼の居場所は圏外なのであって、これは物語の圏内に迷いこんでしまった彼が自分の本来あるべき場所に帰ってゆく道程なのかな。吉田さんの小説に共通する「歳をとるのも悪くない」という人生哲学と、「この世はもっと味気なくて奇跡なんてひとつもなくて、夢も希望もないという風潮」を否定する優しさが、案外暖かい読後感をもたらす。2015/06/09
優希
60
不思議な作品でした。物語なのに物語の外のような印象です。主人公は「カタリテ」という小説家。語っていたはずがいつの間にか語られ、現実が虚構になり、異界が現実になりながら物語に飲み込まれて行きます。風景が浅い眠りで見る夢のようにめまぐるしく変わり、色々な世界へ連れて行かれるようでした。つかみどころがなくてずっとふわふわした感じがします。迷いながら読みましたが、作家の大変さを垣間見たような気がします。難解な感じはしますが面白かったです。2015/01/17
り こ む ん
44
飛んでます。ものすごくアチコチに飛んでるお話。元々、篤弘さんのお話は飛んでるのですが、これは最高峰ではないか?と…カタリテが主人公なのだけど、何となく篤弘さんご本人の創作過程の頭の中ではないかと思う。なので、読み進めている内に主人公の物語の中に、なんでもかんても言葉をメモしている篤弘さんの言葉メモの紙の束から、何かを取り出し形にしようとする作家本人がチラホラ見えるよう。たからだろうか?久々に登場の音ちゃんが…実際、架空の娘なのだけど、やっぱり架空の人になっていく…2016/07/31
アキ・ラメーテ
38
『遠くで泣いている仲間のためにいまここで』『砕け散った細かな文字が青い点となって』『ひとつのものがふたつに分かれつつあった』の3章(過去の物語)は、おもしろかったが、そこまでの145頁が長く、やっと物語が始まった、ここからおもしろくなってくるのかな?と思っていたら、また、現代のカタリテたちの出てくる場面に戻ってしまった。カタリテの登場する場面(小説論的小説)は正直とてもまどろっこしく、なかなか読み進められなかった。創作にかかわる人にとっては面白いかもしれない。2015/10/01
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