内容説明
寺山との出会い、天井棧敷誕生の裏話、病に倒れた寺山との最後の会話…、公私ともにパートナーであった著者だから語れる、素顔の寺山修司とは。寺山修司没後30年、愛あふれる回想記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
80
2005年に刊行された本の文庫化。著者は寺山修司の妻だった九條今日子。寺山修司氏との出会い、結婚そして劇団天井桟敷を立ち上げ日本だけでなく海外にもとびだし高い評価をうけるまで、そして死。後半には天国の寺山修司に向けた手紙も載せられている。寺山修司の描いた詩やエッセイそして戯曲、どれも怪しくて不気味な印象の反面、少女向けの可愛らしい詩もある。つかみどころのない作家というイメージがある。この本はそんな彼の生活や映画作りについてが彼女の目線で書かれている。天井桟敷、リアルで見たかったなあ。2031年の1冊目2019/01/01
yokmin
7
寺山修司の著書は全く読んでいないが、この回想録で彼の人物像がある程度浮き彫りにされている。感性にあふれた人だったようだ。「書を捨てて町に出よう」を読んでみたくなった。2014/07/21
A.T
7
ミニシアターでの実験映画、劇団万有引力による「奴婢訓」、そして映画「さらば箱舟」と作品のいくつかを見て、やっと寺山修司という人を意識するようになった20代。それからさらに20年余後、この本を読んで、途切れ途切れの印象だった寺山さんの活動の全体を知った気がしました。 2013/12/15
おゆ
6
没後30年を機に文庫化、命日を前に再読。著者は元・寺山夫人であり、離婚後も公私にわたり共闘、寺山亡き後は乞われて戸籍上の義妹になったという、面白い経歴のお方。寺山は怪物なので、彼自身が書いたものも彼について書かれたものも面白いが、他者が書いたものには必ず「寺山の死」が書かれているという差は、当たり前なんだけど大きい。「60までは生きたい」と言いながら47で逝ってしまった彼の、早すぎる晩年の様子は読んでいて悔しい。初めて知ったときも今も、寺山に触れると変わらない胸騒ぎを覚える。生き急ぐことに憧れてしまう。2013/05/03
cocobymidinette
4
私の好きな変な人をそばで見つめた女性の文章を読む、自分の中のシリーズ。彼らの信頼した女性の目線だから、その才能と愛すべき人格が最も見えると思うし、彼らの偏愛した女性の立場だから、恋愛小説よりも耽美也。退廃的耽美である場合が多いですけどね。寺山修司の元奥さんは、私と同じ名前。色々あって、でも仲間たちも含めて一緒にいる関係性は、中島らも夫妻とも似ている。ただ、自己愛や懐古が少なくて、ひたすら彼の仕事への敬意が強い内容だった。異性への愛情を上回るほど、才能に惚れ込んでいたのだろうと想像して、改めて早逝が惜しい。2015/11/23