内容説明
毎朝同じ電車の同じ車両に乗る会社員の澄人、合格確実だった中学に落ちてしまった敦俊、トラブルメーカーのホームヘルパー範子、カメラマンの娘を事故で亡くした元学芸員の優作、そして9歳の時の両親の離婚が傷になり結婚に踏み切れない梓。彼らはみんな、人生の迷子になっています。傍目には平穏に過ごしているように見えても、それぞれの理由があって扉を開くことができず、一歩踏み出すにも踏み出せず、じっと立ち止まっているのです。でも、見知らぬ人の思いが巡り巡って、硬く閉ざされた扉を小さく叩き、彼らは進むべき道をたどりはじめます。気づかないほどのふれあいが誰かの心をそっとゆらし、それぞれの人生を大きく動かしていくのです。「定刻の王」「ハートブレイク・ライダー」「幸福の果実」「夏の終わり」の4つの物語が最後の「蔓草」で一つになる。心に沁み入る連作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むぎじる
22
相身互い・・・広い視野での助け合い。そして、知らない間に助け助けられていること。この想いがつまった連作短編集。会話は交わしたことがないけれど、同じ電車に乗り合わせる年配の男性を、文庫本を落として起こしてあげた澄人。ホームを見ると、その男性がこちらに向かって手刀をきってお礼をしていた。この微笑ましい「定刻の王」が、この男性にとって人生の中で貴重な1日となった「夏の終わり」につながったとき、よかったという想いに涙してしまった。自分とつながっているかもしれない人や物に感謝したくなる、心ふるえる小説。2013/05/22
よしりん
14
初めましての作家さん。5編の連作短編集。正直1つめ読みながら‘あんまり好きな感じじゃなかったかも’って思ったけど2つめ、3つめと進むうちどっぷりハマった。『夏の終わり』が特によかった。『アイミタガイ』素敵なタイトル(^-^)2017/09/12
圭都
6
“相見互い” の連作短編集。 何気ない事がどこか繋がって、お互い様!になっている。 話しのどこそかで登場人物が繋がっていて、あ~!と思わせられ面白い。 テーマの違う5編だがベースに相身互いが流れ心地良かった。 何かを返えしてもらおうなどと思わない事を幸せと思う、そんな5編の話しに胸が熱くなった。2013/09/17
lidl
4
日常について書かれておられない方なのにここまで優しい物語が書けるなんて素晴らしいですね。とてもよい作品でした。相見互いというワードなんですね。人の役に立つことに見返りを求めず、人にお世話をかけない事について幸せな事だと思えるような人になりたいなぁ。2015/10/04
藏
3
ほのぼの===って感じで 癒やされます。 最後のアイミタガイのおばぁ~ちゃん最高です。2017/02/28