内容説明
西暦2231年、木星前方トロヤ群の小惑星アキレス。 戦争に敗れたトロヤ人たちは、ヴェスタ人の支配下で屈辱的な生活を送っていた。そんなある日、終戦広場に放置された宇宙戦艦に忍び込んだ少年リュセージとワランキは信じられないものを目にする。いっぽう2014年、北アルプス・コロロギ岳の山頂観測所。 太陽観測に従事する天文学者、岳樺百葉(だけかんばももは)のもとを訪れたのは……。21世紀と23世紀を“つないで”描く異色の時間SF長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
181
まごうことなき秀逸な時間SFです。史実としては国内唯一のコロナ観測所だった乗鞍観測所はすでに役目を終えて閉鎖されています(だから!なのですよ)。さて、最初に二人の少年の巻き込まれたトラブルから始まり、この悔しさがテーマのように見えますが、物語の進行とともに、そんなことはどうでもよくなって、まさに現前の時間トラブルをどう解決するかが核心のテーマだとわかります。作者のアイディアがすごく突飛なので、内容に理解がついてこないところもありますが、慣れれば、実はこういうことではないか、とわかるような気がする瞬間も。2015/06/13
みっちゃん
125
2014年の北アルプスの観測所と2231年の木星の小惑星が繋がった!計らずも繋げてしまったのは時の泉を泳ぐ知性生命体。「時間大根」の形容が可笑しい。小惑星トロヤで廃棄された宇宙戦艦に閉じ込められた少年達を救う為、地球側が繰り出す算段もユーモラス。モナリザの裏に書いた通信とか、200年後の戦艦の航路に投げ込む草刈り鎌とか…そして決め手のアイテムは!?多少出来すぎのどんでん返しのラストが気持ちよい。タイムパラドックスの談義はややこしいけど、爽やかな読後感だ。2014/04/23
いーたん
98
合う合わないで言えば、合いませんでした。ただ、未来とのやりとりは面白かったです。 それと、北アルプスにはコロロギ岳は存在しないようですね。検索かけてもヒットしませんでしたが、摩利支天岳、富士見岳、不肖ケ池などの地名及び標高から、コロロギ岳=乗鞍岳と特定したのですが、乗鞍岳だけいいじゃんと思いました。(コロロギ岳という理由がわずかながら会話から見えたけど、説得力が希薄なような)2014/10/06
おかむー
96
仕掛けはちゃんとしたSFでありながら、ライトでコミカルな文体のおかげでさらりと読み進められる良作。『よくできました』。21世紀の北アルプス・コロロギ岳、そして23世紀の木星前方トロヤ群・小惑星アキレス、その二点を繋ぐ高次元の宇宙生物によって200年の時を超えた救助作戦が繰り広げられる。ホーガンあたりならこの設定で世界中の学者が結集する壮大な展開になるのだろうけれど、あくまで現場の数人の視点だけで描かれるのでいい意味でシンプルに収まっている展開が好感触。さらりとF女子要素も織り交ぜているところに微笑。2016/04/25
ぽんすけ
86
再再再再読くらい。とにかく何回も読んでるこの本。初めて読んだときコロロギ岳ってどこにあるんだろう?って思わず調べてしまったんだけど、同じことしてしまった人が他にもいると信じてます。200年の時間差、木星前方トロヤ群と地球という距離がある中で戦艦に潜り込んだ少年二人を助けるために、現代人岳樺百葉を始めとした様々な人が力を尽くすこの話。一つ一つの行動が未来事象を変えていくのにワクワクする。私は数学も物理もチンプンカンプンだけどそういった人にも溢れるほどのドキドキとワクワクをくれる良作。定期的に詠みたくなる。2021/02/13