内容説明
なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。他人との違いが消えた100%の単一世界から、同調圧力が充満するストレスフルな現代社会を笑う、戦慄の「俺」小説! 大江健三郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
142
なかなか含蓄深い現代の風刺劇。他者と分かり合いたいのに分かり合えなくて淋しいから、全員俺に均一化して意思疎通してみたら、今度はやっぱり自己としての俺に戻りたくなる、そうするとまた他者のことが分からなくなる、っていう無限ループ。他者と分かり合えないことも「俺」が社会において完全に代替可能であることも、すごく良く分かるんだけど、なんというか「所与の前提」な気がするから、今更パニくることでもあるまい、とは思った。でも正面から粘っこく描き切っているところに好感。2017/02/17
hit4papa
66
忘れものの他人の携帯で戯れにオレオレ詐欺を働いた主人公。やすやすと金をせしめた途端、被害者の女性が訪れ主人公を息子として扱うようになります。それを契機に、あちこちに自分=俺が増殖しちゃうっていう、自我崩壊不条理小説です。皆んながそろって俺になっちゃって、俺俺というわけですね。姿かたちは別でも、皆が俺だと認識してしまいます。同じ俺なのに、気の合う俺と虫が好かない俺の存在。さてさて、世の中に溢れる俺(俺たち)の運命やいかに。混乱の極みですが、俺のつながりにもうひと工夫欲しいところです。【大江健三郎賞】2018/11/03
さっとる◎
52
これは恐ろしい本。まさに戦慄の俺小説。他人に囲まれた社会にストレスを感じる。誰もがそうだろう。圧倒的に分かり合える「自分」が「他人」だったら。周りみんな俺。ユートピアがひろがる。しかしながら直視したくない自分ってのが、いる。認めたくないあいつも俺。ユートピアかと思えたそこがディストピアに変貌する。他人が自分ではなく他人であること。自明すぎるくらいに自明でありながら、根本的なストレスとなり得るそこに真っ正面から切り込んだ怪作。自分を信用するのは思いの外難しい。しかし誰もがそれを望んでいることに希望はある。2017/04/22
きっしぃ
42
俺が増殖って、バカバカしい話なのかと思ってたら、だいぶ違った。ブラックなのか、シュールなのか、痛々しい気持ちになればいいのか、なんなのか…。うーん…。読んだタイミングが悪かったのもあり、最後流し読みでした…ごめんなさい(´・ω・`)2017/12/04
Tui
42
自分みたいな人や、同じと思える相手といるのは、心地よくて正直ラクちんだ。でももし、周りがそんな俺(私)ばかりだとしたら、そこは果たしてユートピアだろうか。自分みたいな相手を仮に見つけても、自分ではもちろんないから、いずれ相違点が気になってくるだろう。さらに似ている点そのものが嫌いになったら、相手は憎悪と抹消の対象となるだろう。その先にあるものは、推して知るべしだ。似てる似てない、合う合わない、といった主観から自由な付き合いができたら、どれだけ気楽だろう。私の皮膚感覚にとって、えらく切っ先鋭い本でした。2017/10/03
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