内容説明
電子版限定、物語に登場する巨匠達の名画も収録!美の巨匠たちは、何と戦い、何を夢見たのか-。ドガ、セザンヌ、モネ、マティス。時に異端視され、時に嘲笑されながらも新時代の美を果敢に切り拓いた偉大なアーティスト四人の愛と友情、そして格闘の日々を色鮮やかに蘇らせる短編集。「この世に生を受けたすべてのものが放つ喜びを愛する人間。それが、アンリ・マティスという芸術家なのです」(うつくしい墓)。「これを、次の印象派展に?」ドガは黙ってうなずいた。「闘いなんだよ。私の。――そして、あの子の」(エトワール)。「ポール・セザンヌは誰にも似ていない。ほんとうに特別なんです。いつか必ず、世間が彼に追いつく日がくる」(タンギー爺さん)。「太陽が、この世界を照らし続ける限り。モネという画家は、描き続けるはずだ。呼吸し、命に満ちあふれる風景を」(ジヴェルニーの食卓)。語り手は、彼らの人生と交わった女性たち。助手、ライバル、画材屋の娘、義理の娘――彼女たちが目にした、美と愛を求める闘いとは。『楽園のカンヴァス』で注目を集める著者が贈る、珠玉のアートストーリー四編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1019
『楽園のカンヴァス』に続いて、絵画の世界を描く短篇集。4つの短篇からなるが、基本的には印象派を中心に語ってゆく。冒頭の「美しい墓」は、マティスとピカソを描くので、感覚的には他のものよりもさらに新しいのだが、ルーツは印象派の周縁にあったと言ってよい。色彩の美しさでは、これが一番かと思う。一方、小説を読む楽しみという点では「タンギー爺さん」か。もっとも、この小説の核心となる部分は、映画『モンパルナスの灯』そのものだ。ここから着想を得たかとも思われる。なお、この小説の最後は、なかなかにハートウォーミングだ。2016/08/01
サム・ミイラ
745
マティスとドガ。セザンヌそしてモネ。四人の絵画の巨匠を紡ぐ四つの物語。だが主役は彼らではない。本当の主役は誰にも、そう天才にも凡夫にも公平な「時間」。立ち止まる事なく過ぎ去る時の流れの儚さ愛しさ。時はまさに印象派が一瞬に捉える陽光のようにたゆたい、煌めく光と影となって胸に迫る。それぞれがこれほどに切ない物語だとは想像もしていなかった。原田マハの絵画に関する著書には史実と虚構を上手く組み合わせた優れたものが多いが、私はその中でもこの作品が好きでたまらない。この中にこそ永遠がある。生きる喜びと悲しみがある。2017/04/23
射手座の天使あきちゃん
679
ルーブルもメトロポリタンもエルミタージュも行ったことないですが、マハさんの紡ぐ巨匠たちのこんなエピソードを読めば実物を見たくなっちゃいますよね。 ドガの「エトワール(踊り子)」とモネの「印象・日の出」・「日傘を差す女」は絶対見たいですw! (^_^)v ジヴェルニーにも行ってみたいなぁ。 えっ、これって全然感想になってないですね(笑)。2014/10/11
zero1
671
原田は絵画に作者だけでなく、作者の近くにいた人物たちの物語を見ることができる。画家は特殊な面があるものの、単なる人間。だから食べ、愛し失敗もする。マティス、ドガ、セザンヌ、モネ。ピカソやゴッホも登場。四つの短編は事実を基にしたフィクション。だが次に彼らの作品を鑑賞したら、間違いなく作品への理解が深まる。「読む美術館」である本書。音楽もそうだが、小説で絵画を描ける作家は貴重。読者を未知の世界へ導いてくれる。支持が多いのも納得の秀作だが、一部の読者は内面の毒を描いていない点と変化球を嫌うはず。直木賞候補。2019/06/27
にいにい
563
原田マハさん祭り継続中。だけど、ちょっと間が空き過ぎかな?。今回の作品は、マハさん十八番の芸術もの。まさに、読む美術館。マティス、ドガ、セザンヌ、モネの作品が創られていく様が目に浮かぶ。まだ見ぬ作品も、目の前に示されているような錯覚にも囚われる。巨匠の周りの配役の心理も興味深い。マハさんのアートストーリーは、凄いの一言。本物の絵画も見たくなる魅惑の一冊。マティスとモネの話が好みかな。2014/06/07