内容説明
「私が私であること」「他者が存在すること」がわからなくなるという、多くの人が幼児期あるいは少年期に体験する「独我論的体験」。フッサール心理学はそれを正常な発達過程の一階梯ととらえ、その体験の内的構造を分析すべく現象学を援用して練り上げられた技法である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
18
《購入本》竹田青嗣、西研からの繋がりで手に取ったフッサール現象学関連の一冊。フッサール心理学とは初めて耳にする言葉だったが、読み進めるうちに著者の取り組みが徐々に理解できるようになり、なかなかに興味深かった。振り返れば私自身も隠れ独我論者ではある。それも幼少期の束の間ではなく寧ろ思春期から成人期にかけて、独我論的体験をし、未だその迷路から脱け出せないでいる。「今、ここ、私」の謎は深い。だからこそフッサールにも惹かれる。とりあえず次は『ブリタニカ草稿』を読みたいのだが、なかなか手に入らない。2015/08/30
坂口衣美(エミ)
3
私が私であるのはなぜ?私以外の人間も私と同じように意識があるのか?…あーややこしい。こういう問いに「まっとうな」大人はたぶん答えられない。「あなたがあなたなのは、とにかくそうだから」とか言ってごまかすだろう。しかし子供はこうした問いを投げ掛ける。それはこの本でいわれる「発達性エポケー」から生まれる疑問なのだ。うーむ、自分にもそういう時期があったのかなあ。あったんだろうなきっと…と言うより、未だに「自分」の意識さえよくわからない。こんなふうに感じるのは自分だけなのか?人とわかりあえるようにはならないのか?な2013/05/22
taro335
3
独我論の事例紹介やフッサール現象学の説明など、前半まではとても面白く夢中で読んだが、心理学へ応用する肝心の後半は、興味本位で読み始めただけの自分ではついていけず。独我論や自我について真剣に考えられる人にはいい本なんだろうな。2013/04/30
おもしろコミカルファニーさん。
1
おもしろかったー! 発達性エポケーっておもしろい表現だな。成長課程の中で行われる自然なエポケーか。病理として独我論的世界に落ちるんじゃなくって、普通に自明性が破れるってのよかった。で、自明性の破れを修復するために、変わった世界観を展開するってことなのかな。ってことは、そうした世界観を持つってことは、生き抜こうとする健康的な心の動きなのかもしれないね。再読する!2023/02/05
YASU
1
独我論や自我,他者,間主観性,現象学的還元等の概念についてはとてもわかりやすく解説されている.心理分析における現象学的方法の有効性もわかる.結論的に述べられている,他者=過去または未来の私であるということもわかるのだが,これを導くためにここまでの論証が必要なものか,難しい.私の理解力不足か.2022/11/09