内容説明
名文家でつとに知られた三浦氏が、雑誌「オール讀物」の巻末名物コラム「おしまいのページで」に初登場したのは昭和50年。以来35年、年2篇の割で書きつづけられてきた50本近いエッセイをまとめた、まさに珠玉の随筆集。わずか1000字の中に、故郷である東北の風土やそこで暮らす人々の肌合い、或いは亡き父母を慕う心根といったものが、すぐれたデッサン画をみるように確かな筆致で表現されている。短編の名手でもあった作家の本領が伺える1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
72
三浦哲郎さんのエッセイは初読みです。3頁のエッセイが50篇ほど、身近にある話題で面白かった。【鯨はいずこ】最近とんと見かけなくなった「鯨肉」ですが、むかしは鯨肉のステーキがご馳走でした。わが家の昔も思い出して懐かしかった。山菜の「毒」の話は、怖かったが面白くためになりました。根に猛毒のあるトリカブトの花は美しいそうです。一度見てみたいです。…美文で綴られて、ところどころにユーモアも感じられた素敵なエッセイでした。2023/10/07
shizuka
53
三浦哲郎さんの紡ぐ言葉が美しいと聞いて。たくさんの小さなお話がいっぱい詰まった随筆集。三浦さんの家族のことや田舎のこと、病気のこと犬のこと等、短い話の中にもしっかりと書かれていてどれも興味深く読み終えることができた。各お話の〆の一文に、三浦さんの言葉が美しいとされている所以や言葉に携わり生計を営んできた矜持というか年輪を垣間みることができた気がする。さり気なくもある程度の余韻を持たせつつ、読み手を本の中から現実へ戻す終り方。ダラダラとせず、凛とした佇まいは私の好みだ。次は何か小説を読もう。何にしようかな。2016/09/25
メタボン
32
☆☆☆★ 短いながらも心に響くものがあるエッセイ集。いっぺんに読んでもったいないことをした。温泉などへ行って、のぼせた体を涼めているようなときに、ポツポツと読むのが一番ふさわしいようなエッセイ。2021/06/08
Shoko
30
三浦哲郎氏の本はこれで3冊目。エッセイは初めて読んだ。端整な文章で、意味がすっきりと頭に入ってくる。そして、そこはかとなく漂うユーモア。吉村昭氏のエッセイを読んだ時に感じた印象と似ている。一つ一つ、題名がカッコいい。「車椅子のマフィア」、「乾きの刃」、「炉辺小景」、「鮭を撃つ」目次を見ているだけでワクワクしてくる。しかし内容はというと、病気だったり、老境に入っての身体の変化などカッコいいとは言っていられないものが多い。「忍ぶ川」もいつか読みたい。2019/06/28
maverick, or stranger. still an outsider.
7
恥ずかしながら三浦哲郎氏の事を全く知らずに予備知識無しで読み始めたのは、“名文とは、美しい日本語とはこの方の文章の事”といったような感じの書評に惹かれて。なるほど私の様なものにも読みやすく、すうっと入ってくるこの感じは私が昭和の人間だからでしょうか。何処か懐かしく、奇をてらわない文章はそれだけで暖かくホッとします。内容はどれも取り留めのない私小説の断片のようで極々短いものばかりですが、それでもこの方の素敵な暮らしぶりがうかがえます。お身体を悪くされてリハビリに励む辺りのお話は、いつかの自分と重なりました。2013/05/19
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