内容説明
夜の闇に沈むカフェ。かつて愛した男の霊を見たと親友が話しはじめ……(「東京アクアリウム」)。施設に入居する母が実家で過ごす最後の夜(「猫別れ」)。最終の新幹線で会いに行く、父に似たあの人に(「父の手・父の声」)。出会いと別れが日常に波紋を起こし、遠い過去の記憶が裡から静かにあふれだす。珠玉の作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
97
短編8話。 リリー・マルレーン、 風, 二匹の子鬼, 東京アクアリウム, 小曲, モッキンバードの夜, 猫別れ, 父の手父の声。 なんとなく中途半端と感じるのは文学としてではなく、推理小説として読もうとしているためだろうか。2013/01/20
エドワード
32
動物園や植物園を田園風景に例えるなら、水族館は大都会、それも夜に例えられる。そこには音と匂いがない。ガラス越しに見える、色とりどりの水の生き物たち。そんな都会の海をさまよう男と女を描く8つの短編。人を好きになって、愛して別れる繰り返し。多くは、人生の盛り、あるいは盛りを過ぎた頃合いの男女が主人公だ。「リリー・マルレーン」「二匹の小鬼」「小曲」…終幕に、ふっと変わって見せる表情が好きだ。怒っては泣き、落ち込んでは微笑む。人の心、人の行動は予測が出来ない。東京はアクアリウム。確かに、そうだ。美しい題名だ。2019/04/05
James Hayashi
32
中年と呼ばれるような女性たちを主題とした短編集。それほど熱くはならなかったが、味のある内容。嫉妬や恋愛という感情を書き表し、ユニークさや個性を感じさせる。重いものでなくあっさり読み終える。2018/01/03
ぐうぐう
29
小池真理子の短編の面白さは、もはや改めて言うまでもない。面白いはずだと思いながら 、いつも短編集を読み始めるのだが、いつもやっぱり面白かったと満足して読み終える。期待に充分応える短編が、いつもそこにはあるのだ。2010年に単行本が刊行された『東京アクアリウム』には、比較的短めの短編が8編収録されている。男女の恋を綴ったものもあれば、幻想譚もある。どれも面白いが、一番凄みを感じさせるのは、「風」だ。親友の通夜での出来事がここには描かれている。(つづく)2018/02/25
June
25
主に30〜40代の女性が主人公の短編が8つ。陰を知ってる女性たちのお話。ちょっと不思議な結末のものも幾つかあったが、かなしいお話が多くて、読んだら気分が落ち込んでしまった。2015/10/12