内容説明
何かがおかしい。「嫌な感じ」がどうにも消えない。カリスマが現れても新政府ができても高邁な理想を掲げられても、絶望的いらだちが治まらないのは、なぜなのか? 橋下現象、政権交代、国境騒乱等混沌の真因はどこにあるのか? 維新、大戦、高度成長期等の転機から自由、平等、民主、経済成長、ヒューマニズムの追求こそが幸福であるという、この国が負わされた近代主義を徹底的に懐疑する。稀代の思想家からの鋭い一撃。
目次
第1章 「橋下現象」のイヤな感じ
第2章 総理の品格は、国民の品格
第3章 無脊椎の国、ニッポン
第4章 日本は本当に独立国か
第5章 真珠湾攻撃から70年
第6章 開国という強迫観念
第7章 開国と維新の精神
第8章 福沢諭吉と近代日本の矛盾
第9章 1980年代論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
19
本書の内容もだが、参院選の結果が見えてしまい、どんな恐ろしい社会が大きな口を開けて待ち受けているのかと思ってしまう。「殺伐とした時代」(23頁)という形容も現状を言い当てているかもしれないが、どうも今までにない、嵐の前の静けさを感じる。薄気味悪いのだ。こんなことでいいのか、こんなんで・・・? という疑問を抱いて毎日過ごすことが増えている。10代が平気で人を殺すのは異常だ。今日も線路踏切で人身事故の報。生活苦なのか。今という時代的文脈は、3.11後のどうにもならない閉塞感、虚無主義が蔓延している。ストレス。2013/07/17
RIN
18
納得できるところもあり、反発を感じるところもあり、で全面的にすっきりというわけにはいかなかったが、それでも今の日本の閉塞感や諦念のような曖昧な「時代の空気」が論理的に説明されており、それなりに自分の頭の中や「気分」を整理するのには役立った。それにしても、1921年にスペインの哲学者オルテガの書いた『無脊椎のスペイン』や福沢諭吉の国権論が今の日本に通じるとは。というより、日本独自の社会現象だと思っていたものが時間も場所も超えて、ある種普遍的な国家の一つの行きつく先だ、ということが一番興味深かった。2013/02/14
calaf
12
もっと江戸末期に起こったことの本質を理解するべき。少なくとも知っておくべき。。。多くの日本人は、何の批判も思考もなく理解せずそのまま受け入れているだけだから。そしてそれが、現在社会のあらゆるところに見えてきている閉塞感に繋がっている...という感じの主張かな?私には、本当かどうかは分からない...2013/04/22
isao_key
9
『新潮45』に連載されているエッセイ8編をまとめた本。全編を通して骨太で論理的な論評で貫かれている。現代の気骨あるジャーナリスト。1章は先日辞職した橋下元市長について。氏のやり方について、自分に対する敵対者を悪者に仕立て上げ、問題がそこにあると指定して見せ、大衆の不満をそちらに向ける大衆扇動者だという。だが今日人々は大胆までの粗野さや攻撃性など、橋下流の野蛮さに期待もしていると分析する。開国について、国を開くことは国際化を意味し、無条件に歓迎すべきだという思い込みが多く宣伝されていることを危惧している。2014/03/02
T坊主
9
私は戦後直に生れた者ですが、今定年退職をして時間があれば、本を読むようにしています。若い頃はそんなに深く考えもせず生きてきましたが、こうやって色々な本を今までで一番多く読んでいくと、かなり私たちは知らぬ間に、色々な人、場所、情報により洗脳されたり、無意識の内に取り入れたりされているのだと考えるようになりました。そして日本人が上から下まで良い悪いは別にしてアメリカの目に見えない影によって動かされている事に至ります。著者はそれを鮮やかにあぶりだしています。他の著書も読んでみたくなりました。日本人よ目覚めよう。2013/05/22