内容説明
息子のカケルと二人暮らしの“チッチ”こと青田耕平は、デビュー以来10年「次にくる小説家」と言われてきた。だが、作品は売れず、次第にスランプに陥ってしまう。進まない執筆、妻の死の謎、複数の女性との恋愛……。ひとつの文学賞を巡る転機が、やがてカケルや恋人達との関係を劇的に変化させていく。物語を紡ぐ者の苦悩、恋、そして家族を描いた、切なく、でも温かい感動長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
274
ふぅぅ。石田さんは、こんな優しい物語も書くんだ。読み終えた今、これからはちゃんと(今まで以上に)本屋さん店頭で新刊を買おうって思ったな。2018/03/17
じいじ
109
石田衣良は、好きな作家の一人です。でも、温かい父子愛でこれほど気持ちを揺さぶられる作品は、14作目にして初めてです。妻に先立たれた売れない作家の主人公は、シャイなイメージの著者石田さんに重なります。ちょっと生意気だけど純真無垢で明朗な小学生の息子がとても可愛いくて、父子に声援を送りながら読み進めました。後半ではついに涙腺決壊、石田小説で初めて泣きました。妻の友人に宛てた手紙を読むくだりでは、行ったり来たり3度も読み返した。とても爽やかで清清しい読後感の物語です。もっとこんな石田小説が読みたくなりました。2020/01/08
優希
92
爽やかでした。シングルファーザーのチッチこと青田耕平と息子のカケルの物語。チッチが文学賞を取るまでの流れを軸に、家族のあたたかい風景が見えるようでした。売れない小説家チッチだけれど、カケルとの日常がとても楽しそうで、息子といい関係をきずいていて素敵だなと思います。物語を紡ぐ苦悩なんかも見えて、作家生活の一部を見たような気がしました。読みやすくて父子の絆にほっこりします。優しくて愛があふれているのを感じました。2016/04/29
も
55
妻に先立たれたシングルファザーのチッチと息子のカケル。少々頼りないチッチではあるけれど、お互いに信頼し合っているのがよくわかる。最後は涙ホロリでした~。2016/12/27
ぶんこ
52
あまり売れない作家のチッチと小学生のカケル。4年前にママッチを交通自損事故で亡くし、自殺ではと悩んでいたチッチ。鈍感で誠実なチッチと、大人びているようでも子どもらしさを失っていないカケルの親子が素敵なだけに、ママッチが夫や幼い一人息子、そして職場の親友にまで心配をかけるほど落ち込んだ姿を見せていたのが解せない。心の揺れが表面に現れすぎのチッチとママッチ。親子の物語だけだったら共感できないままでしたが、賞とりの作家、編集者の苦悩を読んで、本好きとしては芥川賞も直木賞にも興味がなかったのを反省しました。2017/01/25