内容説明
人類の歴史には、転げ落ちるように崩壊した社会がある一方、危機に適確に対処し、乗り越えた社会もある。
問題解決に成功した社会例として、徳川幕府の育林政策で森林再生を果たした江戸時代の日本、過酷な人口制限で社会のバランスを保つティコピア島等を検証する。
さらに現代の危機として、中国やオーストラリアの惨状を分析し、崩壊を免れる道をさぐる。
資源、環境、人口、経済格差など複雑化する崩壊の因子を探り、現代人の目指すべき方向を呈示する。
目次
第2部 過去の社会(承前)(存続への二本の道筋)
第3部 現代の社会(アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺 ひとつの島、ふたつの国民、ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ 揺れ動く巨人、中国 搾取されるオーストラリア)
第4部 将来に向けて(社会が破壊的な決断を下すのはなぜか? 大企業と環境―異なる条件、異なる結末 世界はひとつの干拓地)
追記 アンコールの興亡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
64
現代において危機に瀕する国々。人口爆発が大量虐殺を招いたルワンダ。統治の欠如で自然破壊が止まらないハイチ。環境を犠牲に成長を急ぐ中国。脆弱な大陸からの資源の搾取が続くオーストラリア。一方で、危機にうまく対処して繁栄を果たした国々も多い。筆者は、過度の楽観にも悲観にも偏ることなく、将来に向けた教訓を提唱する。グローバル化が進んだ現在、過去のイースター島のように、孤立した文明が崩壊することはない。代わりに、人類全体が危機への対応を迫られていると考えるべきだ。地球が孤立した存在であることは、変わりないのだから。2023/02/18
翔亀
53
滅亡した社会は、要するに「環境問題」が原因だ。現代編である下巻ではルワンダ、ハイチ&ドミニカ、中国、オーストラリアが、滅亡への危機的状況の代表例として取り上げられる。地球温暖化を始め"環境問題"とは近代化/産業化以降のものと思い込んでいた私には、現代の危機が先史時代から綿々と続いてきた積み重ねによることに蒙を啓かれる。例えばオーストラリアが地質と生態系の面でこれほど環境が脆弱だったとは。人類の未来にとってかなり厳しいハードルである環境問題の根の深さを知らしめ、それ故の希望を与えてくれる力作だ。2016/09/18
優希
50
上巻とは色が変わり、一気に現代社会の考察に入ったなと思いました。転落するかのように消えていった社会に対し、危機を乗り越えて生き残った社会の成功例が挙げられています。日本、ティコピアは過去を逆手に取るようにしたから社会として生き残れたのかもしれません。ただ、現代にも危機的状況に置れている国があるのも事実なんですね。中国の惨状は周知の如くですが、一見平和そうなオーストラリアも危機的状態にあるのが意外でした。様々な因果が絡み、国家形成がなされている今、崩壊の可能性の因子を見極め、何を目指すかが必要なんですね。2014/05/12
ヨーイチ
49
とても分厚い上下二巻。小さな島、大きな島、特定の地域が昔栄えていたにも関わらず、何らかの理由で衰退してゆく理由を考察している。「今は無い」社会の研究なので知らない地域、民の方が多い。一番有名なのは例のイースター島か。あれが「最大規模の離れ小島の一つ」って初めて知った。そんな所までヒトが木造船で渡っていたという事実に驚かされる。グリーンランドの来歴は植民したヴァイキング側とキリスト教側の僅かな資料があり少し詳しい。ともあれ文献以前のスケールの話が多い。続く2019/02/17
優希
48
一気に現代社会の考察に入ったようです。転落の如く崩壊した社会がある一方で、危機を乗り越えてきた社会もあるのですね。日本やティコピアは過去を逆手に取るようにしたがために生き残れたのだと思います。ただ、現代も危機的状況にあるのには変わりなく、中国の惨状などは周知のことですし、一見平和そうに見えるオーストラリアも危うい状況といえるでしょう。崩壊を逃れる道を探りながら複雑化する因子を探り、目指すべき方向を示した名著です。2023/11/29