内容説明
それぞれに忠誠心を要求し、人間の行動を左右し、激しく衝突してきた「聖」と「俗」との長い抗争は、政治に何をもたらしたのか。「政治とは何か」を考えるシリーズ二冊目の本書は、教皇至上権とトマス・アクィナスの政治論、ルターの宗教改革、マキアヴェッリの権力論、さらに宗教戦争を経て、「政治の解体」が訪れ、中世が終幕をむかえるまでを論じる。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なつき
5
『宗教と権力の政治 「哲学と政治」講義Ⅱ』読了。Ⅰに続く内容で、教皇至上権、トマス・アクィナス、教会論、マキアヴェッリ、そして宗教戦争まで。Ⅰのときにも思ったけど、政治と哲学という論点がぶれないので好印象。とくに「聖/俗」を知りたいときにはアクセスしたい本のひとつとなりそうだ。2018/08/07
ミカド
3
哲学と政治講義シリーズ第2弾。中世ヨーロッパ政治思想を中心に宗教改革、マキァベッリ、ボーダンの政治思想について講義調で書かれた本。特に個人的に第3章の宗教改革についての叙述が、どのようにしてルターに始まる宗教改革が行われるに至ったのかを思想を着眼点とした分かりやすい説明がされておりおすすめ。2017/11/25
たかみりん
3
宗教と言っても色々あるが、本書で取り扱っているのはキリスト教。中世初期、教会は信仰共同体として政治権力と共に社会全体をカバーする組織として機能していた。それが領域国家の誕生に伴い、教皇権の没落、宗教改革を経て、権力から分離していく様を分かりやすく解説する。中でも面白いなと思ったのがマキアヴェッリの章で、なぜ彼が政治学の祖とされるのか、彼の思想がなぜラディカルで危険な思想と見なされたのかが、この文脈で説明されるととてもすっきり理解できる。さすがマキアヴェッリに造詣の深い先生ならではのご本だなという感じ。2014/04/29
mochita
2
『よみがえる古代思想』の続き。複雑怪奇な中世ヨーロッパが実に面白く書かれていて、引き込まれる。特に宗教革命のところは、ワクワクするのでぜひご一読を。2017/11/02
うえ
2
「カルヴァンとマキアヴェリは,ほとんど同じようなことをいっています。ただ片方は宗教改革家になり片方は権力の政治学を提供したことが非常におもしろい」「マキアヴェリの政治学は…外面的世界における統治に関心を絞るもの」「人権というのは近代になって出てきた新しいきわめて抽象的な権利概念です…ただ生きて食べるしか能力がない人間がどうして権利を持つのかということで,大騒ぎしたわけです」「一人だけ中世において立法権を持っていた人がいたのです。これこそほかならぬローマ教皇その人です」2014/11/08