内容説明
1920年代後半の英国。 エリオットには秘密があった。 資産家の子息の替え玉として名門大学で学び、目が見えなくなった「血のつながらない妹」のため、実の兄のふりをして通いつめる日々。 そんなエリオットの元に、シグモンド・ヴェルティゴという見目麗しき一人の男が現れる。 《脱け出したくばね、必要なのは概念の改革だよ。エリオット・フォッセー》 もの憂い眩暈。純粋な美。エレガントな悪徳。高貴な血に潜んでいる病んだ「真実」 精緻な知に彩られた、めくるめく浪漫物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
46
題名と表紙を見た瞬間に「読みたい!」と思った本です。論理学、神学に関する記述が難解でしたが、美しく幻想的な文章を楽しめました。みめ麗しけれど、普通の人間から見れば、「異形」と謂わざるを得ない2人の男の存在の謎を解き明かす、このミステリーが面白い!その解決編となる「銀翼」のシーンは冒険小説さながらで、手に汗握りました。シグモンドのミリュエルに対する時を超えた想いは哀しく、切なく、いとおしかったです。2012/12/23
papako
39
Readerにて。読友さんの感想が気になって。堪能しました。独特の空気感のある文章、端正な言葉。シグモンドとエリオット、2人の時間軸で物語が進み、最後に運命が交錯する。まるで、ベネディクトのために生きたようなシグモンドの人生は渡り鳥のよう。しかし、エリオットとの最後のひと時はまるで家族のような時間。そしてラストへ。時間や言葉の概念も詩のような美しさ。とても読みやすく、他の作品も読んでみたいです。 2014/03/22
kishikan
37
うーん、読み終えるのに2週間もかかっちゃったよう。仕事が忙しくて疲れちゃって、読書タイムが取れなかったこともあるけど、とにかく読み難いことは確か。これ海外作家の翻訳じゃないんですよね。だとすれば、少なくとも会話文は日本語の構成として変です。20世紀のイギリス、ミステリ、論理的な構成や心理的描写など、小説としてはクリスティ賞にもうなずける位良いんだけど、読みにくいとあっちゃねぇ。歴史が好きで読解力があって、忍耐強く本が読める人にはお薦めだけど、 ただ面白いミステリが好き、という人には薦められないかなぁ。2015/05/20
藤月はな(灯れ松明の火)
32
ある時は血の繋がらず、目の不自由な妹、クリスティンの兄として、ある時は資産家の堕落した息子の替え玉として、異なった役割で生活をするエリオット。姉でもある娘の胎から生まれたことに憎悪するシグモンド。現在ではおかしい鳥の剥製や人物の関わりの中でシグモンドの秘密が明らかにされていく時、彼を付け狙う死にたがりの男との因果関係ではない、シンクロ二ティにどう、対処するべきか。怪奇、幻想、哲学、論理学、科学の要素が紗のようにキャンバスに重なり、やがて本当の姿と歴史によって望まれたものも融合した絵の美しさのような作品。2013/02/15
天の川
30
第2回アガサ・クリスティ賞受賞作。とはいえ、ミステリーというより耽美な幻想文学。ぎっしり詰め込まれた内容が重く、美しく…読むのに時間がかかりました。私は皆川博子さんに相通じるものを感じたのですが…。19世紀後期と1920年代後半のイギリス、時を超えて現れる端整な美貌の貴族シグ。彼に殺されるために4年ごとに現れるベネ。マザーグースやアリス、韻文、回文などの言葉遊びが散りばめられ、神学やラテン語、論理学とてんこ盛り。選評に「衒学趣味」とありました。なるほど。ちょっとしんどいけれど、他の作品も読んでみようかな…2014/08/09