内容説明
今まで何を聞き書きしてきたのか――。厳しい自己認識から再出発した著者は、土地の記憶を掘り返し、近代の残像を探りつつ、剥き出しの海辺に「来るべき日本の姿」を見出していく。津波から逃れた縄文貝塚、名勝松島の変貌、大久保利通が描いた夢、塩田から原発、そして再び潟に戻った風景……。日本列島の百年を問う渾身の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
301
著者は「東北学」を主宰する民俗学者。ここしばらくは、震災関連の書物も社会派系のものを読んでいたので、最初はなまぬるい感が否めなかった。とりわけ、当面は原発も致し方ないとの立場が、あまりにも体制的に見えたからである。しかし、読み進めていくうちに、しだいに著者のスタンスも了解できるようになった。彼が中心となった「ふくしま会議」でも、さまざまな対立が浮き彫りになったようだが、赤坂は被災者たちは「不安に駆られ、―中略―引き裂かれています」と言う。また「津軽てんでんこ」の解釈も限りなく優しく被災者に寄り添うものだ。2016/03/04
なおこっか
4
東松島の野蒜は、私が唯一、2011年に直接津波の被災状況を目にした地域である。家々が波に撃ち抜かれ、外壁だけになって暗い虚のような口を開けていた様は、今でも忘れられないし、忘れるべきではない。その野蒜が、明治初期までほぼ海で、100年に満たない期間で砂に埋まっただけの土地であった、との話はショックだった。要するに、住むに適さなかったのだ。明治11年に大久保利通の旗振りで着工した野蒜築港は、6年後の台風被害で頓挫した。築港の意図は、戊辰戦争の傷痕残る東北への慰撫だったのでは、と赤坂先生。歴史の反復を思う。2023/03/23
壱萬参仟縁
4
図書館新刊コーナーから失敬してきた。被災してこころの渇きを潤すには、本の存在が改めて大きいことに気づかされる。東北学の提唱者の著者は、「百万冊の本を集めようと呼びかけました」(29ページ)とのことなので、この提起は本読書メーターのユーザーも何らかの協力ができるのでは、と思った。被災者も避難先で利用している人もいるだろうし、仮設住宅でも本を読んでなんとか立ち直ろうとされている方々のためにも何かできないか。子どもへの絵本など、ヴォランティアの手によって整備していることに頭が下がる。ネットでも本サイトで貢献可。2012/11/21
エボシペンギン
3
2013年に出た本。中身は震災1年くらいのものが多い。この頃は、被災地の惨状に心を痛めつつも、ここから日本は変わらなければいけない、変わる機会にしなければいけないという、ある意味身勝手な希望のようなものがあったと思う。原発をやめて再生可能エネルギーを中心にして、物質より人の心を大切にして… しかし実際は、ひたすら現実を塗布して覆い隠し、ごく一部の支持者にのみ奉仕し、反対意見を敵やイチャモンとして、圧倒的多数の国民の無気力と分断を作り出した政権になったのが、歴史の現実なわけで、読んでて切なくなった。2021/07/18
warimachi
3
ところどころ、どこかで読んだ記憶がある。何かの授業か試験で見かけたような気もするのだが、刊行時には既に社会人だったし……どこで読んだんだろう。2020/03/26