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内容説明
ヒマラヤの大岩壁に果敢な単独登攀で挑み続けた山野井泰史。その行動と思想を克明な取材で追う。 10代のクライミング武者修行からトール西壁、冬季フィッツロイ、冬季アマ・ダブラム西壁の単独初登を経て、チョ・オユー、マカルーといった8000メートル峰の壁に挑むまでを描いた意欲作である。 山野井泰史は、沢木耕太郎著『凍』のモデルとなった登山家で、『凍』は講談社ノンフィクション賞も受賞している。
目次
<目次・内容>
プロローグ 自分という極限?マカルー西壁・1996年秋
第1章
高みを見るような
第2章
少年の日に
第3章
揺れる自我
第4章
登る意味
第5章
トール西壁
第6章
敗れざる「フィッツロイ」
第7章
奥多摩の日々
第8章
妥協せず
第9章
山に溶ける
第10章
自分を生きる
あとがき
文庫のあとがき
解説 山野井泰史という男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
100
山野井泰史に対する1996〜98年の取材記録。ギャチュンカンで指を失う前、「世界最強」と謳われた意気軒昂の時代。著者自身もかつて登山に入れ込んだ身として山野井の行動や考え方に色々と考察を試みているが、主観が強すぎて空振り気味、沢木や山野井自身の著書に比べて冗長さが否めない。学友や業界人のコメントは透徹な人間性や挑戦の難易度を多角的に映し出していて、壮絶な冬季フィッツロイなんかは引用が功を制している。相対的価値観に染まり自己実現の本質を見失いがちな現代において、彼の『ソロ』スタンスは重要な示唆を孕んでいる。2022/06/30
greenish 🌿
22
ヒマラヤの大岩壁に果敢に挑み続ける最強のソロクライマー山野井泰史。10代のクライミング修行から8000メートル峰の壁に挑むまでを描いたノンフィクション ---壮絶なギャチュンカンからの生還、致命的な喪失があってもなお垂直の壁に取り付こうとする山野井氏の、幼少期から青年期までの自我の形成や人間性に迫る本著。 自由奔放で、けれどストイック、いいかげんに見えて信念の人で、常に恐怖に囚われながら、一方で常識には囚われず、生きとしものに優しく、子どものように無心で感受性豊か、そんな山野井氏の素顔に触れられました。2014/03/15
arkibito
4
山を愛し、山に愛されし者、山野井泰史。彼が向こう見ずで荒削りだった山好きの若者から、いかにして世界有数のソロクライマーへと登りつめていったのか。数々の輝かしい功績をトレースするのではなく、自らを取り巻く環境で、いかに周囲の人々と対峙してきたのか、決して器用とは言えない、むしろ失敗続きの人間関係にスポットを当て、彼の青年期における人間的・内面的な成長を追ったルポ。2013/03/26
Yasutaka Nishimoto
3
ギャチュンカン前の、山野井さんの半生。インタビューアーの目を通して、何故そこまでして登るのかという部分に迫っていく。山野井さんのことは沢木耕太郎の凍を読んで、またNHKのグリーンランド登攀を見て分かった気になっていたが、本人の垂直の記憶、父が書いた五分五分、そして本書でようやく感覚としてつかめてきたものがある。フリーソロで岩を登る技術があるからこそ、新しい登攀に恐れずに挑戦することができる。自分自身に置き換えたとき、磨いてきた技があるからこそ、全力で物事に取り組めるといったところか。レベルが違いますね。2023/02/28
かっぱ
3
山野井泰史の半生を半生を追った1冊。1番感動した沢木耕太郎の「凍」を超えはしないが、死ぬかもしれない岩に挑む山野井泰史の本心をつかもうとする著者の必死さが伝わる。そんな著者の必死さとは対照的に山野井泰史本人は山や岩のこと以外に関心を持たない様子が伺える。山野井泰史関連の本は本人が書いた物も含めて3冊読んだけど、読めば読むほど言葉が不要な物に思えてきた。彼のことを書きたくなるのは分かるが、山野井ワールドは言葉では表現できないと思った。今、彼の映画が公開されている。映像の山野井ワールドが楽しみでしかない。2022/11/29