内容説明
株取引に夢を描く男たちは、最後に何を見たのか?大正六年十月二十五日、東京・日本橋川にひとりの男の水死体があがった。検死の結果、身元は赤坂田町の鶏卵商吉井忠二郎、自殺と判明。だが、警視庁の木谷五郎警部補は何か判然としない思いにかられる。吉井は、木谷が十日ほど前に「暴利取締令」の摘発で取り調べをした男で、罪状はとるに足らない軽微なものだった。とてもそれを苦に自殺するとは思えなかったのである。木谷は捜査を進めるうちに、吉井が株投資で大金を失った事実を突き止める。その陰には、非合法取引で甘い汁を吸う男たちの姿がちらついていた。人間の欲望とロマンをドラマチックに描く感動の歴史マネー小説。
著者等紹介
渡辺房男[ワタナベフサオ]
1944年山梨県甲府市生まれ。東京大学文学部仏文科卒。NHKディレクターを経て、現在(株)NHKエンタープライズ21プロデューサー。99年「桜田門外十万坪」で第23回歴史文学賞、「指」で第18回世田谷文学賞(小説部門)を受賞。2001年「ゲルマン紙幣一億円」で第15回中村星湖文学賞を受賞
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感想・レビュー
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シュラフ
2
今でこそ当たり前となった株式取引をめぐるインサイダー規制。この物語では大正時代の株式取引をめぐる殺人事件をきっかけに一人の警部が当時の株式取引の闇に迫るといったストーリー展開になっている。投資家の無知を悪用して金を巻き上げる仲買人、政治家を取り込んで金融政策の動向を探ろうとする男、こうしたイカサマぶりを暴こうと奮戦する警部と若き検事。今で言うインサイダー、不正取引を取り上げている。第一次世界大戦で過熱する日本の株式市場の様子など盛り込まれており、当時の様子を雰囲気として感じることができる。 2012/12/26
としき
0
ちょうど百年前の頃の時代設定、現代の証券取引のはしりの頃のお話!タイトルは「インサイダー」だが、当然その頃は今のように証券取引法や証券監視委員会が整備されていなくダフ屋のような闇取引だったのだろう。でも、よく考えるとこれだけ法整備された現代でもインサイダー取引がはびこっている。どれだけ時代が変遷しても光と闇の世界は存在するものなのだろう。作者はそこの所を揶揄して「インサイダー」とタイトルしたのではないだろうか?証券市場に携わった経験があったので、とても面白く読ませてもらった。2014/01/23