内容説明
輪島在住の漆作家が、器とは、美とは、世界とは何かを、深く静かに思索したエッセイ。奥能登の海山にかこまれて家族と暮す日々を綴り、ときに旅先、記憶の情景を描く。根来塗、茶の湯、春日大社、伊勢神宮、メムリンク、松田正平、ロスコの絵……。「これから僕が語ろうとしていることには、まだ名前がつけられていない」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
野のこ
31
「せいいっぱい自分になる」素敵な言葉やなぁと思いました。そして「作品に対しては、いかに自分を消すかということを追求する」「完璧なつまらなさ」ですって。うーん、深い…。赤木さんのうつわは見たことがないので実際に触れてみたいです。おぉって思ったのは、私の好きな伊藤まさこさんが出てきて彼女の特殊な好みが分かったこと。変わっとて、ちょっと意外でした。2017/06/22
ichi
18
【図書館本】塗師赤木明登さんの生き方や漆塗りの職についての哲学的エッセイ。哲学が苦手な自分は分かりづらい部分が多かったです。2017/12/30
紫羊
15
著者のエッセイ「美しいこと」「美しいもの」を読んだ時に持った不思議な印象は、やっぱり今回も感じた。とはいえ美しい写真と哲学的な文章…心を動かされない私の感性が鈍すぎるのだと、結局3冊付き合ったが、どうしても合わなかった。残念。2014/05/14
misui
4
輪島の塗師による器や美についてのエッセイ。制作の中で個の消失点を探り、彼方に広がる絶対的な何かに合流すること、そこを目指して続けられる自己との対話が書き留められている。自然・文明・宗教をも包括する名づけえぬもの、移ろうものの中に現出する永遠の美など、言葉で小さくまとめてしまうにはそれはあまりにも広く大きい。実際にこの人の器を手にした上で若干の贔屓目もあるのだが、それを抜きにしても本書は信ずるに足る、と考えている。2015/12/16
ばーさん
0
形あるものをつくる人が、形ないものを語る。触れるものをつくる人が、テクスチャーを語る。そのテクスチャーを作り出す精神性を語り、材料を語る。 作り手の端くれとして何度も読み返したい本。2016/03/19