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内容説明
現在、危機に陥っているEU。その成立前史となる欧州統合運動に、じつはチャーチルが関わっていた。大英帝国の復権を野望する彼は、終戦後の米、露、欧州各国の覇権争いを見据えて、“欧州統合の父”と呼ばれた活動家クーデンホーフに目をつける。その清冽な志を利用すべく、老獪な政治家チャーチルは謀略を巡らせる。ふたりの奇妙な協力関係を物語る貴重な往復書簡を読み解きながら、欧州統合前夜の鼓動を描いた歴史ノンフィクション。
目次
序章 書簡に隠された秘密
第1章 チャーチルとEU草創
第2章 ソ連の脅威
第3章 連合か、連邦か
第4章 大英帝国復権への野望
第5章 舞台を降りる
終章 現代に甦るチャーチル
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
50
EUのルーツとなった思想、キーマンとなるクーデンホーフという人物など、テレビのドキュメンタリーを見ている気分で読めた。チャーチルが基本思想にここまで深く関わっていたことを知らなかったし、当時のヨーロッパ・ソ連・アメリカという世界のパワーバランスが現代にも適用される時代になっているという思いも持った(中国は出てこないですが)。2015/09/15
mazda
23
大戦後から今のEUのような構想があったそうで、主導したチャーチルの思惑が見え隠れしていました。ヨーロッパ合衆国とでもいうべき国を目指していたけど、その裏には過去の栄光、大英帝国の誇りのようなものが垣間見えます。皮肉にも、そんな誇りが今回の国民投票で離脱を支持したという結果になりました。1つになるように訴えた国が、分裂するように訴えるようになるとは、人間は歴史を学ばないんだな、と思いました。2016/07/14
ceskepivo
6
チャーチルとクーデンホーフの書簡のやり取りが興味深い。英連邦・米・欧州大陸という大三角形の中心に英が君臨するというクーデンホーフの構想に対して、チャーチルは、英は統合に積極的に参加するという。英が米と欧州大陸を指導下におけるという保証はなく、英が欧州統合に内在的にかかわらないと、欧州への影響力を少なくしてしまうという危機感があったとのではないか。なお、本書でプラハの故ガイスラー氏と再会できたのは嬉しい驚きであった。合掌。2015/10/10
はな
3
チャーチルが第二次世界対戦後、権力から外れて野党党首となっていた時、ソビエト連邦に対抗するためヨーロッパを統合するというプランを持っていた。チャーチルに先駆けて貴族出身のクーデンホーフは「パン・ヨーロッパ運動」を推し進めチャーチルとは違った形でのヨーロッパ統合を画策し、一歩リードしていた。チャーチルは大英帝国の復権と名をさらに上げるためクーデンホーフを利用して統合を押し進めようとする。著者は2人の書簡を丁寧に読み解くことによってその駆け引きを読者の前に提出する。晩年まで続いたチャーチルの野心が凄い。2018/12/18
おらひらお
3
2012年初版。方法は異なれど、第2次世界大戦後のソ連の驚異を目の前にしたヨーロッパのあり方について模索したチャーチルとグーデンホーフの話です。やはりチャーチルはかなり老練な動きを見せますね。2014/06/19