内容説明
太宰治の出世作『斜陽』の下敷きとなった、回想録的な日記。太宰の“愛人”として娘・治子を生んだ太田静子が、1945年の春から12月までの日々を太宰に勧められるままに綴って渡したもので、太宰が入水自殺したとき、この日記が書斎の机に置かれており、井伏鱒二らが『斜陽』の印税10万円とともに静子に返却しにきたという逸話が残っている。 『斜陽』の「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」の一節など、文面がまったく同じ箇所も多く見受けられ、太宰がどのように“文学”に昇華させたかがわかる貴重な資料でもある。 文庫オリジナルとして、太宰からの手紙やふたりが過ごした山荘の写真等を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
96
太宰治の代表作「斜陽」のベースとなった回想録的な太田静子の日記。この日記がなければ「斜陽」も生まれなかったと思うと感慨深いものがあります。日記は全体的に物悲しい雰囲気が漂っていました。戦時中にもかかわらず、日々の雑事をこなしながら読書をする静子とその母の暮らしぶりは何だか夢のように浮世離れしていて、不思議な感じもします。「死んで行くひとは美しい。生きるということ、それは、たいへん醜くて、血の匂いがする汚らしいことのような気がする」この一文が深く印象に残りました。また「斜陽」も再読したいです。2017/07/13
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
50
太宰の『斜陽』自体は読んだことが無い。『斜陽』を読んだことが無いにもかかわらず、なぜか図書館でこの本を手に取ってしまった。太宰治の愛人だった太田静子の戦中日記。美しく浮世離れしたお母さまと娘の静子。疎開先でも、ほとんど戦争を感じさせない2人。多くの人たちが飢えていた時代に食べるものにも困らず、海外文学など優雅に読んでいる……。ここまで浮世離れした戦中の生活を描いたものは初めて読んだ。著者の感性はとても、新鮮で太宰が自分の小説に取り入れたくなった気持ちもわかる気がする。2016/09/14
Vakira
41
西に傾いた太陽である。転じて新しい物に圧倒されて次第に没落していくこと。太宰の一時の愛人、太田静子さんの日記。ちょうど第二次世界大戦。時代と戦争によって没落していくリアル貴族の日々を綴る。太宰の「斜陽」を読む前にその構想となった太田静子さんの日記を読んでみた。ちゃんと物語として読めます。普通に文学少女。「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」。静子さんなかなかの読書家でもある。貴族だったので外国文学の全集が家にあったのでしょう。これを太宰はどのようにアレンジしたのか?太宰版よむのが楽しみだ。2023/04/12
sat
37
太宰の子供を産み、太宰の”斜陽”の下敷きとなった本書を書いた愛人・静子。文体、設定、エピソード等、多くの重なる点があった。これはこれで、面白い。 ー 「斜陽」のかず子の最後の手紙、あの一字一句、そのままに、生きようと思います。 ー 静子と治子の想いに胸がつまる。2016/09/09
ヒラP@ehon.gohon
14
映画「人間失格」を観て、太宰作品と併読。太宰の「斜陽」との類似点に、二人の関係のもつれを感じた。2019/11/04