内容説明
三代将軍・徳川家光時代の江戸。将軍家指南番・柳生家の門弟が宮本武蔵を名乗る者たちに次々闇討ちされる事件が発生。柳生一族のはみ出し侍、浪句家(ロッカー)の柳生六丸は、美少女剣士・舞花とともに6人の「武蔵」たちと戦うはめになる。その裏には幕府をも巻き込んだ恐るべき陰謀が進行していた……。恋とロックと剣豪小説を融合させた青春伝奇時代劇が登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
60
時代小説なのにロックのライブ場面から始まり、独特な造語は飛び交うし電気のインフラは整った世界だし、奇抜さに目を引かれる。そのインパクトとは逆にかなり丁寧に組まれた内容で鎖国をしなかったもう一つの江戸時代が舞台。剣豪小説の定番を押さえた展開ながらもオリジナリティ溢れる活劇の連打。可憐なのにやたら強いヒロインにはライトノベル的に萌える。主人公にはあまり見せ場が無いのかな?と思いきや剣術と音楽を融合させるという秀逸なアイデアで綺麗にまとまる。バンド設定も生きるのには恐れ入った。流麗でポップな文体も読みやすい。2017/05/13
あなほりふくろう
15
「王子降臨」経由。青春ロックなボーイミーツガールだけど時代劇、伝奇小説としても手堅い作り。文章もラノベよりは時代小説に近い感じでしっかりめ、ただ剣戟シーンの描写はあっさり気味だったかな。あまり余計な要素を盛り込んでいないのでこれを叩き台にいろいろ脚色して舞台劇をやったら面白くなるのでは、とちょっと思った。2014/06/04
ふじさん
6
第九回講談社BOX新人賞Talents受賞作。これは思わぬ拾い物だった。時代小説という触れ込みには物怖じする向きもあるかも知れないが、その実体はどこまでも真っ直ぐな青春小説である。一つ一つの要素が無駄なく噛み合う事で紡がれる物語は極めて流麗。娯楽作品としての完成度はかなりの物だろう。カタカナ語を全て漢字に直した趣向も面白く、中でも「交種子島(セックス・ピストルズ)」という表記には一発で心を掴まれた。ラノベ読みからも時代小説読みからも敬遠されそうな作風で商業的な成功は端から望めないだろうが、文句無しの傑作。2012/06/09
紫
4
剣術は音楽だ! 浪句(ロック)だ! 剣禅一致ならぬ剣音一致の新境地? 徳川幕府が鎖国せず、大幅に史実をフライングしたエレキテル技術が発展したパラレルワールドでスチームパンクな江戸が舞台の伝奇時代劇であります。奇妙奇天烈なトンデモ設定なのでコミカルタッチなイロモノかと思いきや、意外にガチで王道の伝奇×剣豪バトルだったんだから、あーっ、どうしてもっとこの小説を早く読んでおかなかったんだ! と伝奇者の端くれとしては悔やまれるばかり。主役に抜擢されたのはロックな柳生六丸(列堂義仙)。暗愚ら者って何なのさ。星5つ。2020/10/18
なつきネコ
4
王子降臨の流れから読んでみた。なんでか殺陣師がマンガポイ設定を考えると、こうなると言う典型例みたいな作品。本当におもしろかった。歴史と創造のバランスもよく、話の流れやキャラもよい。特に舞花はかなり可愛くてお気に入り。元々かなり濃い柳生兄弟はうまく表現してるなと思う。しかし、戦闘は殺陣師らしい描写だが、武道家としたら首をヒネルところがあるのが残念。しかし、一番に致命的なのはラノベでこういう作品は売れにくい。むしろ少年マンガの原案とすれば女性に売れたかもしれないと思う。私的には好みなんだけど残念。2015/09/29