内容説明
天皇陛下万歳! 大正から昭和の敗戦へ――時代が下れば下るほど、近代化が進展すればするほど、日本人はなぜ神がかっていったのか? 皇道派vs.統制派、世界最終戦論、総力戦体制、そして一億玉砕……。第一次世界大戦に衝撃を受けた軍人たちの戦争哲学を読み解き、近代日本のアイロニカルな運命を一気に描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
108
日本の近代史で余り重要視されてない第一次大戦。戦勝国側につき青島攻略などで余禄を得、五大国の一角を占めるが、これからの戦争は国家の資源を総動員する総力戦となることを学ばなかったという。が、軍の当事者は理解してないわけではなかった。「持てる国」と「持たざる国」。皇道派の理論家小畑敏四郎は「持たざる国」として身の丈に合った戦争を考え、足らざるところは精神力でとし、一応統制派とされる石原莞爾は、日本を「持てる国」にした後「持てる国」米国と世界最終戦争に臨もうとし、その手段として満州事変を起こした。2022/12/20
どんぐり
74
戦争の勝ち負けは兵員、装備、資源、生産力、技術力、労働力等の多寡で決まる。物が足りない日本はどうやって戦争を続けるのか。「持たざる国」の戦争は、鉄が足りなければ「天皇陛下万歳!」と叫んで、肉を弾にするしかない捨て身の精神主義。その拠り所は神がかった「皇道」だ。そのなかで「持たざる国」の日本が「持てる国」に変ずるにはどうしたらよいのか、満州を一大根拠地にすれば「持てる国」になれると考えたのが石原莞爾。日本を「持てる国」にしてから戦争にしようという統制派だ。日本陸軍を皇道派と統制派で思想史的に見る視点がなかな2018/08/02
Willie the Wildcat
60
神尾将軍の功績から宇垣軍縮の真実。兵力から火力・・・、”距離”の差異。対照的な『観察』の客観性が印象的。生産力の無さという客観性が、精神論に戻る故のアポリア。タンネンベルク会戦検証の苦悩が頭に浮かぶ。1928年に改定された『統帥綱領』、『戦闘綱要』が明示的な転機。加えて、”領はく”ではなく”知らす”の天皇制の実態。結果、本著題名。宮澤賢治から”無”に至る論旨。意味深。死はみこと、みことは貴。言葉遊びであり、矛盾を戦略とする愚。但し、後世故の戯言では済まない代償だったのではなかろうか。2016/10/24
Tomoichi
44
第一次世界大戦を機に「総力戦」へと変貌した戦争を「持たざる国」貧乏国家日本はどう戦うのか?軍人たちはそれぞれに考え、そして精神論へと収斂していく過程を小畑敏四郎を中心に皇道派・統制派、石原莞爾・中柴未純らの思想を媒体に読み解く。日露戦争以後、司馬遼太郎のいうリアリズムが日本陸軍から失われたかわかる「持たざる国」の悲劇の物語。2018/06/30
kawa
42
日露戦後、大正・昭和の日本の軍部指導者層(特に陸軍中枢)が劣化していたとする批判、果たしてそれが妥当なのかを綿密に考察する良書。筆者曰く、「司馬遼太郎のように、明治まではよかったが日露戦争のあとの日本の政治家や軍人はヴィジョンもなく指導力もない者ばかり、と考えることもできなくはありませんが、しかし実はいちばん悪いのは明治のシステム設計だった」とし、それを「未完のファシズム」と称する。(コメントへ)2022/09/23
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