内容説明
作家、評論家をはじめミステリーマニアの集まる下宿屋・時鐘(とけい)館。編集者の催促を前に「原稿は一枚も書けていない。勝手ながら『消失』する」との手紙を残し、締め切り直前の老推理作家が姿を消した。翌朝、発見された不格好な雪だるまに彼の死体が。犯人は編集者なのかそれとも…。マニアたちの展開する華麗でシビアな推理の行方は? 傑作ミステリー短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
386
今邑彩さんの8冊目の6編を収録した初短編集です。今邑さんの良さは極端に重苦しくなく本格推理だけでなくサスペンス・ホラー・幻想SFの世界にまで手を伸ばす柔軟さだと思いますね。フェアな本格推理ばかり書いていると飽きがきて面白くなくなるのでしょうね。本書の6編はヴァラエティー豊かな作風でいろんな意味で逆転のどんでん返しが味わえて面白く最高に楽しめましたね。『生ける屍の殺人』作家を殺したのは編集者の女だが何と犯行時には既に死んでいたという信じられないオカルテックな事件の真相は?やられた!と脱力した後更なる衝撃が!2022/09/12
麦ちゃんの下僕
206
[館探訪・マニアック編⑤]時鐘館:東京の高層ビル群の中にある洋館。2階が下宿屋になっている。家主の桜井徹男は熱狂的な時計愛好家◇今邑彩さんの最初の短編集ですが…収録された6編全てが秀作です!特に表題作「時鐘館の殺人」は、90ページ余りの作品ですが構成が実に凝っていて面白い!中でも、今邑さんvs編集者の“バトル”が良いですね(笑) 他の作品も、ホラーやファンタジーテイストのものからイヤミス・バカミス(!?)まで…どれも読みやすく展開も捻りが効いていて、今邑さんの入門編としても短編集の入門編としても最適です♪2021/05/21
nobby
174
なるほど納得のミステリー、ホラーと器用な短編6作品。少々物足りなさ感じるも、最後はきちんと捻りが重なり充分楽しめる。大掛かりな標題作「時鐘館の殺人」分かりやすいアナグラムからエピローグで繋がる真相に思わず笑顔。こちらの“時鐘(とけい)館”もなかなかの読み心地。一番お気に入りな「黒白の反転」いろいろ怪しい事実が当たるのが心地よく、最後にモヤモヤがストンと落とされゾクッと。SFテイストな「あの子はだあれ」は何やら複雑不思議でまとまるかと思いきや、ラスト何とも切ない…2017/03/10
しんたろー
170
時折、無性に読みたくなる今邑さん…読み逃していた初期作は6つの短編集。どれも基本は正統派のミステリだがホラーテイストを加えた「今邑ワールド」な作品も含まれて満足。『生ける屍の殺人』や『黒白の反転』は引っ繰り返しが巧く気持ち好く騙された。6作の中ではチョッと異質な『あの子はだあれ』は切ない余韻が好み。凝った構成で「本格もの」としての謎解きを楽しませてくれる表題作もミステリ作家としてのレベルの高さを感じさせてくれた。所々にユーモアを交えた読み易い文章も上手で「早逝なさったのが惜しい!」とつくづく思わされた。2022/04/16
アッシュ姉
94
今邑さん18冊目。ハッとするオチが用意された短篇集。結末へ辿り着くと見てきた景色がくるりと変わるのが楽しい。往年の大女優の秘密「黒白の反転」がとくにお気に入り。推理の応酬が会話で続く「生ける屍の殺人」だけ苦戦したが、それ以外は頭の固い私でも読みやすく、難解そうに思えた表題作もユーモアが効いていてとても面白かった。ご自身も楽しんで書いていそうな雰囲気が伝わってきて好き。これで未読の短編はあと一冊。コンプしたいけど、読んでしまうのが勿体ない気もする。2018/03/16
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- 死にゆく妻との旅路 新潮文庫