内容説明
世界は今、「お金とテクノロジー」に支配されきってしまった感がある。そんな中で、著者の省察では、「日本は、誰も経験したことがない時代」に突入した。どういうことかというと、まず、人口が減少を始めた。このことは、経済という観点から見れば、右肩上がりの経済成長は見込めないということを示し、したがって、日本としては、「経済成長のない未来」を考える必要に迫られた。また、その経済成長にともなって運営される筈の、民主主義ということにも、見直しをせざるを得なくなった。さらには、いつになったら解決するのかわからない、「フクシマ」という問題を抱え込んだ。これらはいずれも、「解き難い問題」であり、それを含んだ未来を我々はいかにして肯定的に考えてゆくべきなのか。これまでの著者の問題意識を総覧した、「平川克美への入門書」というべき一冊である。
目次
第1話 行き詰まった民主主義(震災で露呈した民主主義の「行き詰まり」 家族の崩壊、出生率の低下、そして原発は、抱いた「欲望」の結果である ほか)
第2話 「解き難い問題を解く」ということ(すべての問題は、難しい 二項対立の式は、もはやナンセンスである ほか)
第3話 欲望とは(マズローの「欲求五段階説」の不足 欲望はアンビバレント ほか)
第4話 なぜ「経済成長」にこだわるのか(「資本主義システム」とはいったい何なのか 世界的な総需要の減退により変化する世界の均衡 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gatsby
12
今までの平川氏の本とは違ってインタビュー本として出版されている。平川氏も書いているとおり、考えながら話し、話しながら考えているので、そのうちにだんだん考えが整理されていくという部分もあるように思う。二項対立という問いのたて方がもはや機能しなくなっていること、自分の責任でないことを自らの問いとして考える、というテーマが興味深かった。さらには、「縮減」というテーマと、殊に、人間は自分が思っていることと違うことを実現してしまうというテーマには関心させられた。なかなかこういう観点から物事を考える人はいない。2012/06/14
シュラフ
11
わたしはこの平川克美が好きである。この本は平川克美の放談集でテーマが幅広いのだが、どのテーマも"考えるヒント"として現代社会を読み解くヒントを拾い集めることができる。例えば、物事を単純化して考える"縮減モデル"というもの。本来的には物事の本質をとらえようとする姿勢のはずなのだが、世の中をとらえようとする場合には物事の本質をはずしてしまうことがあるという。数年前の小泉劇場における二項対立的な問いのことである。そんな時は別の次元からの視点というものを持つことで全体性の回復をはかることが重要だという。2015/12/12
陽之理
4
拡大成長はどう考えても無理があるけど、みんな考えないフリをしている。2014/08/06
Hiroki Nishizumi
3
著者自身の見解というよりも、それらを導くための先達の叡智の数々、下川治、レヴィ・ストロース、マズローなどの言葉、功績が参考になった。カタログ的な意味で読んで良かった。2014/03/03
しゅんぺい(笑)
3
平川克美さんの研究分野である経済とはちょっと反れて、「移行期的混乱期」における思考法を主に取り扱った本。 テイストは違っていたが、かなりおもしろかった!心に残る文章が多かった。 ものごとを悪い意味で「わかりやすく」してしまう「縮減」という言葉がキーワードやった気がします。それを頭に入れて、次元を上げて考えること。 責任がないものについても責任をとろうとする姿勢、の話はとても共感した。 またぜひ読みたい本です。2012/05/31
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