内容説明
『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞した桜木紫乃のデビュー作品集! 真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で静かに再会した男と女を描く『氷平線』。酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を、牧草匂う交歓の裏に映し出した『雪虫』(オール讀物新人賞受賞作)――。北海道の農村を覆う閉塞感と、そこに生きる男女の虚無的で乾いたセックスを鮮烈に描いた、読む者の魂を熱く震わせる全6篇を収録。桜木紫乃の原点はここにある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
520
釧路をはじめ道東を舞台に描かれた6つの短篇を収録。中には、例えば「霧繭」のように道東であることの必然性の乏しいものもあるが、他は概ねこの地の風土を反映している。とりわけそれが顕著なのは、冒頭に置かれた「雪虫」であり、そこには世代の苦しみと、もうどうしようもない逼塞感の中に喘ぐ姿がある。また、道東ならではの流氷を背景に描かれた表題作「氷平線」は、作りこみ過ぎたがためにエンターテインメント小説としてはともかく、文学としての純度は低くなってしまったが、それでもそこにはこの作者特有の作品世界が展開する。2019/03/18
ミカママ
413
男と女は、その関係が始まったときから終わりが見えている。結婚していない(できない)ふたりであれば、なおさらのこと。北の大地を這うようにして生きる男女の出会い、とまどい、絶望が描かれた作品。私自身の個人的心情で『海に帰る』の寺町と7歳年上の絹子の交情が身につまされた。女がいつか目の前から消えてしまうのではないかという、彼の不安が愛おしい。最愛の言葉って「好きだよ」とかじゃなくて「ずっと一緒にいよう」なんじゃないかなぁ、なんてね。桜木さんの個人的ベストかも(オイオイまたかよ・笑)。2017/07/23
さてさて
296
北海道の圧倒的な大自然の中に生きる人々の力強い日常を見事なまでに描写したこの作品。それは、『こうして脈々と受け継がれてゆく平穏は、人ではなく集落自体の生命力かもしれない』という北国の大地の恵みを受け、北国の大地に生活の糧を求め、そして、北国の大地に人生を捧げてきた人々の生き様を見やるものでした。これが、まさかのデビュー作!という桜木紫乃さんの研ぎ澄まされた文章表現の妙を垣間見ることのできたこの作品。まるで長編小説を読み終えたかのようにも感じるその読後に、深い余韻がいつまでも残り続けるのを感じた絶品でした。2021/05/03
サム・ミイラ
251
男性の私は女性との違いを言い聞かされてきました。先輩にもメディアにも。いわく女性は過去を綺麗に忘れ二度とふり返らない。女々しいのは男。女性は未来に男性は過去に生きる云々。しかしこの小説を読んだ時、男女に違いはないのだと確信しました。人は同じように痛みや苦しみを抱え生きている。各々の出会いと別れと愛の形。ひとつだけ言えるのは精神年齢はやはり女性が圧倒的に上。男は幼い。でもいつか理屈ではなく分かる時はくる。それが生きるという事なのだと。表題作はじめ全ての物語に共通する作者のメッセージに心震える傑作です。2018/08/05
おしゃべりメガネ
228
道東に自分も長く住んでいたせいか、やはり桜木さんの作品は他の作者さんとはまた違った思い入れで読み進めてしまいます。決して明るく前向きとは言いがたい作風ですが、やはりクォリティの高さは間違いなく、読了後のなんとも言いがたい満足感、充実感を得ることができます。理容院を引き継いだ男性が不思議な女性との関わりを描いた『海に帰る』は二人の間合いが絶妙に描かれ、歯科医と院長との歪んだ恋愛を綴った『水の棺』は読んでいて、不思議とスッキリしたキモチになれました。初期の作品らしく、最近の作品ではあまりない鋭さを感じます。2018/04/07
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