内容説明
与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。明治末から昭和初めの動乱期に、シベリア鉄道で大陸を横断した逞しい女性作家たちの足跡を辿り、著者もウラジオストクから鉄道で旅に出た。愛と理想に生きた三人に思いを馳せながら、パリを目指す。車中での食事、乗客とのふれあい、歴史の爪跡が残る街…世界で最も長い鉄道旅をめぐるエピソードの数々。三人と著者の旅が、時を超えて交錯する評伝紀行。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆか
31
歴史上に残る3人の女性と、彼女たちが辿ったモスクワやパリでの訪問先を同じ様に辿る著者。尊敬出来る、興味のある人物がいるからこそ、こういう目的での旅行が成立するんでしょう。私にはそこまで思える人物はいるかなぁーと考えてみましたが、残念ながらいませんでした。とはいえ、3名の滞在記と、著者の滞在記が行ったり来たりするもんで、今がどの時代か混乱してしまいました。でも、読了後には、どこか静かで景色のいい自分の知らない場所に旅行に行きたくなります。2019/01/02
かもめ通信
22
かつてシベリア鉄道に乗って旅をした与謝野晶子、宮本(中條)百合子、林芙美子という三人の女性の足跡を追ったなんとも欲張りな紀行文。あれこれと興味深いエピソードがちりばめられてはいたが、この三人の行程を追うだけでなく、著者本人の旅のあれこれも語られるので、とにかく情報が多い割に整理整頓ができていないとでもいうか、雑多な感じが否めなかった…と、文句を言いつつも、またまたあれやこれやと読みたい本のリストを伸ばしてしまったのもある意味お約束か……。2017/10/04
みみずく
13
著者が与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子のシベリア鉄道の旅を辿った評伝紀行。明治や大正の頃の旅行は今と全然違うように思っていたけれど、経路もそんなに変わらず風景や建物を今でも見出すことができるのは驚いた。それにしても与謝野晶子の旺盛さにはタジタジだった。林芙美子の明るさは魅力的だし宮本百合子は強烈なお嬢様で純真。百合子の旅の道連れ湯浅芳子のさっぱりした様子も気になった。2013/12/16
さっと
12
女三人とは与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子で、彼女たちの軌跡を紀行文、短歌、日記等をテキストにはるかパリまで陸路で追体験する。とりあえず一人目の旅人として登場する与謝野晶子が強烈すぎる。すでに七人の子の母でありながら、「恋人」と歌に詠む夫を追ってパリに行く。そして、再び子を宿して帰国。をいをい。そのせいか二人目の百合子嬢はやや印象に薄いが、日記と後の自伝的小説の丹念な読み比べには頭が下がる。三人目の芙美子サンは他のアンソロジーでもつまみ読みしたことあるが、今度こそ単著で読みたいと思う。魅力的な人である。2023/10/01
chieeee-
10
時代の女流作家3名と著者のロシアやパリの滞在記。決して旅行記ではなく、生活そのものだったり、貧しい時代の海外旅行がどれほど大変で勇気のあった事かを描いている本作。ちょいちょい日本史やロシア史、フランス史などが出てきて勉強にもなった。今の時代とは違う、こんな昔に海外へ行く事が難しい事は容易に想像出来るだけに、意志の強い3人だったのだと改めて感じる事が出来ました。歴史好きにはお勧め。2020/10/03