内容説明
昭和初期の東北の寒村で貧しい狸とりの息子として、侘しい暮らしを送る男。肺病の家系にあり、村八分にされている。そんな彼の心の慰めは、おミツという村の女だった。盗人の家に生まれ、差別さて続けたおミツと男は惹かれあう。しかし、あるとき村長の息子たちに捕らえられ、おミツは殺され、男は村長の息子等を殺して、命からがら生まれた村を離れる。自然の中でつかの間の幸せを味わう男に迫る追っ手の魔の手。彼の運命はいかに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
169
いや、マジでスゴい作品でした。200頁超の作品でしたが、その内容はボリューム以上にとてつもなく重厚でハンパなくヘヴィでした。時は昭和の初期、東北のとある村で貧しくも懸命に生きる少年「鉄」のとにかく‘生きる’ため、そして己の威信を守るために、戦い続けるその壮絶な半生をダイナミックに描いています。『光る牙』などで、すでにその卓越した情景描写は確立されていましたが、本作のとにかくリアルな‘生’への執着や匂いすら感じ取れるのではと思わせてくれる作風に、ただひたすら圧倒されました。今年のベスト3に入る作品かなと。2015/12/25
ケイ
132
読み始めるまで、漢字二文字のこともあり、吉村昭氏の作品かと思っていた。しかし、この作品にも、この作品のもつ読み応えがある。村八分の悲惨さが、ひしひしと伝わる。田舎はいいなんて軽々しく言うもんじゃないなと、子供の頃に繰り返し聞かされた母方の親戚の田舎の話でを思い出す。終盤は読んでいて痛かった。早く反撃しろと、憎いだろうにと、早く振り回せと彼らに心で叫んでいた。2017/01/19
いつでも母さん
122
読友さんのレビューに誘われての1冊。凄いです。この感情をなんと表現したらいいのでしょうか。こちらの心を抉ってくるのです。昔から村にある『偏見』『差別』全てはここから始まったのです。かかわる者が亡くなっても生きるしかない男・鉄が哀しいのです。破戒僧に助けられ再生の途中で更に運命は彼を突き落す。どこまで試されるのでしょうか。鋭利な刃を見て『人間の善悪なんてこの刃のようなもの。表裏一体』と思い浮かべた鉄は既に悟っていたのでしょうか。どんなに体が傷ついても心は、精神は研ぎ澄まされていくと感じて読了しました。2016/01/18
miww
101
小さな村で、生まれながらに蔑まれ底辺の生活を強いられる鉄。村を出てからも彼を待っているのは過酷で壮絶な運命だった。心を通わせた人を失い絶望しながら、生き抜く鉄の強さに終始圧倒された。あまりの生々しい描写にくじけそうになるが読む手が止まらない。凄いお話でした。 2018/02/25
モルク
81
読みごたえのある作品だった。村八分の家に生まれ育った主人公鉄。あまりの仕打ちに殺人を犯してしまい、故郷を離れ逃亡。猟師であったスキルをいかし、生来の器用さもあって他の地、仕事も対応できる逞しさ。それ故周りの人にも恵まれ好かれるが、次から次へと襲ってくる禍。よくこれで根性がねじまがらながったなと思う。そして情を通じたおミツやあや子の生い立ちや短い生涯が悲しみを誘う。そして最後の息がつまるような壮絶な闘い。圧巻である。このような世界を描ける吉村さんの力量を感じ、他の作品も読んでみたいと思った。2018/02/14




