内容説明
特別付録、北重人エッセイを収録!
「人間生きていれば、消化しきれず心の奥に残してきたことの一つや二つはある」。
働くことも、生きることも、こんなに真っ直ぐだった。
時代小説に新たな地平を開いてきた北重人が描く、あの頃の風景、そこかしこにあった人情、そして青春。
昭和41年。東京は下町に、奇妙な新聞販売店があった。段ボールで仕切られた「鳥かご」と呼ばれる個室に住み込みで働くのは、風変わりな面々。配達先も癖のある住人ばかり。山形からやってきた受験浪人の康男は、初めての東京、仕事に悪戦苦闘し、恋や事件に巻き込まれていく。
“人生が動き出した時”を描いた、急逝した作家、渾身の青春譜。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
45
北さんより4つ上の爺様。やっぱり信州の片田舎から、昼間の高校に行かせてもらえるからと新聞店に住み込み。朝夕刊を配り、大通りでの販売。お給料は無し。地元で親の庇護の元で暮らす私にはそんな世界を知る由もない。朝鮮人、レッドパージに引っ掛かった親を持つ息子。色々な人がいたけれど、皆それぞれ夢を持って大学に・・弁護士に・・巣立って行ったと。大学は卒業したけれど・・今よりもっと不況?だったのか教師になれず信州に帰って小説を書いて・・また京に舞い戻って私との縁。穏やかな、忍耐強い性格に感謝し日々を送らせて貰っている2015/09/29
真理そら
20
この作者の作品でこれだけが現代小説。巻末にエッセー集も収録されている。新聞配達店に住み込んで浪人し、大学に入るまでの一年間を40年後から振り返る形式の作品。サキやテツなど、主人公・康男がその後の人生では出会いそうにない人たちと濃厚な時間を共有している。団塊の世代の青春と言えば政治的な活動と切り離せないような印象があったが、多くの学生はこんな感じに生きていたのかな、と思わせる作品。2018/08/31
ふみえ
8
昭和を感じた。私が誕生した頃もこんな雰囲気が漂っていた。スッゴい入れ墨をしているお爺さんとかいたし、貧乏とお金持ちの違いがハッキリしていた。今は新聞配達も大分減った。懐かしさとともに少し物悲しくなった。2016/06/17
theo
2
昔友達が配達員してました。相当濃い世界で面白い世界のようだ。そんな世界の物語。やっぱり濃いくて、どこか魅力的な世界でした。2013/05/10
みじんこ
2
素晴らしい作品だ。いまサキちゃんはどうしてるんだろう。2013/02/03