内容説明
アイヌ民族の戦いを描いた歴史巨編、完結
ついに国後で始まった和人との戦い。蝦夷地全土に渦巻く不満、すべてのアイヌが抱える悲憤――。自分たちが立ち上がれば、厚岸、忠類、野付嶋など各地のアイヌが次々に後に続くと信じて起こした戦いだった。しかし、アイヌ民族の一斉蜂起という願いは叶わず、叛乱に立ち上がったのは、国後と忠類のほか目梨地方のわずかな地点にとどまった。そこへ新井田孫三郎率いる松前藩の鎮撫軍が、大砲さえ擁する圧倒的な装備で鎮圧に迫る。さらには厚岸の惣長人イコトイが、自分の地位の安泰を図って鎮撫軍に擦り寄る動きさえ見せはじめた。もはや勝ち目はなくなった。負けを覚悟で徹底抗戦を続けても、それは厚岸をはじめ鎮撫軍に与する同胞と戦うことを意味するのだ。松前藩から示された降伏の条件は、恭順の徴に貢ぎ物と人質を差し出し、首謀者を樺太送りにすること。しかし、この戦いを終わらせるために、国後の人々はさらに大きな犠牲を払わなければならなかった……。民族の誇りのために命を賭したアイヌの思いは報われたのか。そして、江戸幕府の描いた「日本」という国の形とはどのようなものだったのか。蝦夷の地に革命の時代を凝縮させた渾身の歴史超大作、ここに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
75
再読。蝦夷地最大の蜂起「国後・目梨の乱」。だが、アイヌが命を賭けての闘いも、無惨な失敗に終わる。そして、和人に蹂躙されたアイヌの生活や人間関係は、もはやもとには戻らない。自らのアイデンティティーを否定されてしまったハルナフリの最後はあまりにも悲しいが、彼の復讐は、和人にいいように翻弄された数多くのアイヌたちの怒りの代弁として、作者はどうしても書かずにはいられなかったのだろう。2020/01/30
キャプテン
47
★★★★★_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1792年江戸時代─ラスクマン来航編】その音は、鎖のきしむ音でござる。ぎしぎしと、ぎしぎしと。その音は、泣き声にあらず。ぎしぎしと。鎖のきしむ音でござる。国を閉ざす鎖と、内からも外からも、ひたすらに鎖をこじ開けようとする力。露西亜からのラスクマンが見据えるのは、日本を縛り付ける鎖。その狭間で、蝦夷地が泣く。ぎしぎしと。無機質に。ここは異国。そこで何があろうと、別件。蝦夷地、別件。その音は、鎖の軋む音にあらず。俺の心が軋む音にござる。ぎしぎしと。終結の下巻。2018/02/05
翔亀
45
最終巻に来て打ちのめされた。史実に即した歴史小説として進んできたのに、下巻に入ってすぐ歴史的な事件は史実通りの結末を迎える。そこから普通はエピローグとなるはずだが、これが370ページも続く。そしてこの創作部分こそ船戸さんが書きたかったことであり、真骨頂なのだろう。ここをネタバレすると本書の面白さは半減するので敢えて書かないが、あの主人公1のアイヌ人、あの主人公2の和人、そして多くの主役級が、こう云う形の思いもよらない驚愕/暗澹/沈鬱/絶望的なエピローグになだれ込んでいくと誰が想像できただろうか。↓2015/06/10
しあん
34
ロシアの陰惨な牢獄、美貌を誇ったサキオマツの死…まさかあの人が裏切るとは。命を賭して挑んだアイヌたちの闘いは失敗に終わる。後半のあの心が綺麗だった純粋なあの人の変わりようったら無い。まさに心が死んでいるのだろう。アイヌたちを裏から扇動し、闘いへと駆り立てたあの人も無惨な最期を遂げる。そしてラストの手紙を読んだ時、あらためてその意味を知り冒頭の書状の意味を理解するのです。なんという迫力、筆致なんだろう。物凄い読み応えでした。2019/11/23
ひよこ
33
◆長かった~!2000ページくらいあったかな。「砂のクロニクル」もそうだったけど、船戸与一の作品を読むのには体力がいる。だけどその分内容が濃くて面白い!◆投降するか、徹底抗戦か、しかし、どちらにしても何かしらの悔いが残っただろう。結局、和人に蹂躙されたアイヌの人々の暮らしや慣習は元には戻らず、和人化の途は避けられなかっただろう。それにしても、おお、ハルナフリ!なぜそうなってしまったのだ!お前がそうなってしまたのが一番悲しい(;_;)2017/11/23
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