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内容説明
アジア・太平洋戦争の「清算」は一九五一年締結のサンフランシスコ講和を始めとする一連の条約で終えたはずだった。だが八〇年代以降、教科書、慰安婦、靖国神社、そして個人補償請求と問題が噴出。日本政府は司法の支持を頼りに、一連の条約を「盾」とし跳ね返してきたが、世界の民主化、人道主義の浸透の前に政策転換を余儀なくされつつある。戦後日本の歴史問題の軌跡を追い、現代国家はいかに歴史と向き合うべきかを問う。
目次
戦争検証の挫折
第1部 サンフランシスコ講和体制(東京裁判と戦犯釈放
「戦争犠牲者」とは誰か-「国家補償」と戦争賠償
「植民地帝国」の清算-請求権と国籍放棄)
第2部 一九八〇年代-「公平」と「受忍」(靖国神社問題の国際化-中曽根公式参拝の挫折
歴史教科書問題-イデオロギー論争から国際問題へ
戦後処理問題の「終焉」-受忍論による国家補償回避)
第3部 世紀転換期-冷戦・五五年体制崩壊後(「侵略戦争」をめぐる攻防-細川発言から村山談話へ
「言葉」から「償い」へ-新たな「和解政策」の模索 ほか)
「平和国家」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
31
「(軍人)恩給のピークは1969年で283万人、53年からの累積総額は2010年までに52兆円に達している。次に述べるアジア諸国の被害に対する償いのために支払った賠償総額は、準賠償も含めて約1兆円である。」本書はふたつに分かれている様に読めます。穏当かつ平易ながら第3章までは考えさせる記述が多く、度々止まりながら読まざるを得ませんでした。第2章ではインドネシアやベトナムにおける被害が取り上げられており、44年から45年にかけてベトナム北部で起こった大飢饉では200万人が餓死したといわれており、日仏の因果関2021/02/27
ロッキーのパパ
9
本書で言う歴史とは主に戦前の対外関係史のことであるが、その価値観は対象とならない。その歴史に起因する「歴史問題」の経緯と、国内社会や教科書問題などの対外関係に解説している。この本を読んだら、中韓との関係は将来的に楽観視できるという気がしてきた。中国は「侵略に対する抗日」、韓国は「植民地支配」というパブリック・メモリーを持っており、互いの歴史観は受け入れられないと思う。しかし、教科書問題が大きな問題にならなくなってきたように、過去と今後を切り離す未来志向の考えが日中韓で定着しつつあるのではないか。2012/01/05
sk
7
日本の戦後処理問題を網羅的に取り扱った本。東京裁判から靖国問題まで、第二次世界大戦を日本がその後どのように扱ってきたか丁寧に追っていてとても勉強になる。2017/06/05
水
2
戦後から現代まで、日本が抱えることになった諸問題の原点から過程まで学ぶことが出来る。非常に細かくも繊細な問題だからこそ読むのが大変だが、読んでこそ蓄積された知識同士が繋がり、ためになる、そんな本。歴史好きの方々もぜひ読んでほしい。2018/12/22
ア
2
先月読了。「パブリックメモリー」の形成と「講話体制」の2つが大きなテーマかと思う。 両方とも、筆者がそれをもって表そうとしていることが明確でなく、もやもやとした部分が残るが、「講和体制」がもたらした負の側面やパブリックメモリーの形成の努力と難しさなどがまとめられている。2016/11/02