内容説明
帝の寵姫・朧月夜と密会し、須磨へ流刑となった光源氏が、明石の君に心奪われる。その構想を筆にするため、須磨を旅した紫式部は、海岸で謎の修行僧・孤雲に出会う。孤雲は式部が執筆中、いつも聞こえてきた安倍晴明の琵琶を携えていた。京に戻った式部は、東宮の妃に取り憑いた妖怪を祓うため、孤雲が御所入りしたことを知り、奇妙な偶然に心ざわめくのだった。更けゆく夜に琵琶の音色が流れ、再び式部の物語が動き始める。映画「源氏物語 千年の謎」原作の続編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
30
源氏物語と紫式部の実生活が交錯するという、なんとも謎めいたお話。映画になった1の方が面白かった。2は紫式部も光源氏も愛憎の底なし沼にはまり込んでいくようで、読んでいて苦しかった。ちょいちょい設定を変えてあるので、明石の君ってこうだった?とか朧月夜ってこうだっけ?とか、もう一度(本物の)源氏物語を読んで確認したくなった。2015/06/22
冬見
8
すべてはあの夜、ふたつの月から始まった。今作もまた現実と虚構とが入り混じる。物語、まやかしの世界の暴走。物語を紡ぐ者、物語を動かす者は誰なのか。前作で「あなたの掌の上で踊らされていた」と言っていた源氏の君だけど、それについては決着がついたのでよかった。人によるけど、これ『源氏物語』を読んでた方が楽しめるかも。作中作の『源氏物語』の部分もなかなかおもしろかった。2016/08/04
D21 レム
6
場面の動き方と台詞が印象的で、アニメ作品にしたらおもしろそうな話だった。六条邸が燃えて、燃やしたのが源氏が愛した姫君たちだというところだけは、ぐっと感じるものがあった。紫の上の心にも鬼が、源氏にも鬼が、式部にも鬼が、多くの人の心に鬼がうまれ、鬼を飼っている。しかし、暑苦しいばかりの男、男、男な道長には鬼も寄り付かないのか?ホラー的でもあった。言葉や発想は斬新だが、全体がもうひとつではあった。2013/05/17
maekoo
5
映画原作本の続編だがどちらも映画とは違う更なる複雑で深い悦びと哀しみを描いている。 この続編は明石も末摘花も柏木・女三宮も独自の登場人物も登場! 映画で描き切らなかった紫式部と光源氏の栄華と悲哀を艶っぽく且哀しく描いている。 血生臭い場面も多く紫式部ファンや原典ファンにはキツイ部分もあるが、道長の時代の権謀術数や源氏物語の造形世界を別のアングルから愉しめる史実と物語の時空を超えた小説として愉しめる。 以外に原典や史実をなぞっていてそれを巧く創作として拡げている二つの世界の男と女の愛憎悲劇物語となっている。2024/11/23
えみちゃん
5
先日映画を観たせいか、紫式部は中谷美紀さん、藤原道長は東山紀之さんという具合に頭の中で変換されてしまう。あぁ、映像ってすごい!物語そのものは、まず原作と切り離して考えなくては。源氏と関係した女君たちの哀しみ、心の闇がより深く描かれていると思います。その為、より一層人間味を感じます。六条院炎上には、びっくり!そして、同時進行している、紫式部と道長の恋。この恋があって、生まれた「源氏物語」。式部の心が外にむいたことを知った道長は許す事ができない彼の不器用さ。「孤独な魂を持つものは、彷徨い続けなければならない」2012/01/10