内容説明
日米開戦から70年の時を経て、80歳の姉の家から見つかった45冊のノート。それは幼少期を過ごした米国での友人グロリアへ向けて書き続けた、手紙仕立ての日記だった。自由を満喫できた「敵国」に思いを馳せつつも連日の空襲に苦しむ日々……。戦後は戦犯裁判の通訳を務めた姉の人生をジャーナリストの著者が綴った感動の記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みえ
47
13才で戦争のためアメリカから帰国した利根子。アメリカに友人もいるし、アメリカの生活に戻りたい、日本の生活にも馴染めない。戦争への不安。心の葛藤をアメリカ人の友人グロリア宛てに日記風に手紙を書いた物を本にしている。 ものすごくいい本。アンネの日記を思い出した。とてもオススメ。2020/07/27
sasha
4
帰国子女。今でさえ祖国へ馴染めない人が多いと聞くのだが、それが戦時下の日本だったらどうだ。偏見も差別もあったろう。母国語よりも少女期を過ごしたアメリカで使っていた英語の方が使いやすかったはずなのに、敵性語なんだものな。ジャーナリスト・木村太郎氏のお姉様である利根子さんは、誰にも打ち明けられない心の内をアメリカ人の親友・グロリアに宛てた手紙という形式で日記を書き綴った。日本とアメリカ、ふたつの国の間で揺れ動いた人生だったんだなぁ。2014/03/05
まやま
0
家人に届いた「三田評論」で木村太郎氏が自著であるこの本について書いているのを見て読んでみたくなった。田辺聖子の「おかあさん疲れたよ」の登場人物と同じように、利根子も空襲や学徒勤労奉仕を経験するが、意味合いは全く違ったものだったろう。アメリカでの自由で開明的な教育を受けてきて、帰国した日本で受けた仕打ちに不条理を感じながら、日本人として生きるのだ という決意を手紙や日記に綴るところ、あるいは、男女の友達とのやりとりや職場での同僚からの扱いに一喜一憂する様子を綴るところに、多感な若い女性が幾度も思い惑い、葛藤2012/02/20
ホン
0
ブロードウェー観劇など華やかなアメリカでの生活に慣れ親しんだ少女が日米関係悪化でいきなりの帰国。贅沢禁止令で男はカーキ色の軍服、女はモンペ姿であり英語は話せても母国語は話せない カルチャーショックどころか天国から地獄の気分だったろう。アメリカの親友 グロリアへの本心を真剣になって綴った届く当てもない数多くの手紙。どんなに落ち込んでも物事の明るい面を見ながら頑張ろうとする姿が素晴らしい。 ニュースキャスター木村太郎氏が脳こうそくで入院した姉の日記を綴った伝記であり姉への想いが伝わってくる。2012/02/12