内容説明
鬼才が放つ恐るべきハードボイルドミステリ!
誘拐されて殺された目も鼻もない子供。彼は黒い山肌を這い登ってゆく。誰も待つことのない賽の河原をさまよいつづける――。
男は大きな夢を持っていた。それは、殺人事件の加害者の心の暗部に直接働きかけるケア・センターづくり。しかし、その慈愛に満ちた男はいったいどこに消えてしまったのか。
彼との再会を願う殺人犯の娘のため、探偵は過去の闇へと分け入る。そして、すでに解決したと思われた事件は、探偵の前に驚くべき異なった貌を現わす。
コミック界の鬼才が、ミステリに挑戦して大きな反響を呼んだ傑作、待望の文庫版を電子化!
『追憶の夜』を改題のうえ、加筆改稿して新たに世の中に問う問題作。
著者プロフィール
山上たつひこ(やまがみたつひこ)
1947年徳島県生まれ。70年、ポリティカルフィクション「光る風」。72年、ギャグ作品の「喜劇新思想体系」。74年、「がきデカ」。87年、初の短篇小説「カボチャ通り」を発表。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@the_booby
53
山上たつひこと言えば「がきデカ」としか認識しておりませんでした。こんなミステリを書いていたとは!23年前に起きた誘拐殺人事件の被害者である家族から調査の依頼を受ける調査人成瀬。と同時にその事件の加害者の娘から恩人を探して欲しいとの依頼を受けた。少ない手掛かりから関係者を訪ね浮き上がる真実は探偵小説の王道だか死刑制度の話も絡ませ奥行きを持たせた。金沢の街を舞台にしているのも作家の武器でしょうね。加害者の妻である文子が哀しいのですがラストシーンは山上氏の優しさですかね。次もあれば読みたいです。2019/07/18
kinnov
37
ロスマクドナルド的な家族の陰に横たわる闇を描きながら、死刑、加害者、被害者、罪、罰、償いと言う安易には答の出せない問題を深く扱い、同時に人の愛、憎、業を織り混ぜた一筋縄では括れない人の感情を一つに纏めあげた硬作。主人公の感情の状態を言葉にせず、時に過剰とも思えるペシミスティックないかにもな比喩が、作品にさらに硬度を与えているガチガチのハードボイルド。読み続けるのは、相当タフだった。作者の胸に燻る想いと思考の深さと底の暗さに引き摺られような体験だった。媚びを排除した孤高で硬質な言葉の塊。2024/01/18
sayzk
7
少し、登場人物や色々な設定をたくさん入れ過ぎたのか、「えっ?アレはあ?アノ人はどうなったんかな?」と点と点が全部は線になりきれてなかったように思ったのは私の記憶力と読解力がないせいか?でも全体的には面白かったよ。しかし、さすがはガキデカ生みの親?「死刑!」論。当時からあんなこと考えつつあのネタ描いてたんですか?2015/05/23
Vakira
6
山上たつひこさんは「光る風」などの初期の漫画が好きでした。「喜劇新思想体系」で山上氏のギャクセンスにぶっ飛んだのは40年も前の話。 いつの間に小説家になっていたとは・・・ なかなかミステリーとしてはちゃんと推理オチのあり良い作品だと思います。 また書いて欲しいですね。2012/08/04
やなお
5
あの山上たつひこさんのハードボイルド小説です。面白かった。2014/11/02
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