内容説明
でたらめな地図に隠された意味、
しゃべる壁に隔てられた青年、
川に振りかけられた香水、
現れた住職と失踪した研究者、
頭蓋骨を探す映画監督、
楽器なしで奏でられる音楽……。
日常のなかにふと顔をのぞかせる、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」は、美学理論の講義を通して、その謎を解き明かしてゆく。
第一回アガサ・クリスティー賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優愛
223
「いつも物語はどこかで誰かに読み解かれるのを待っている」川に振りかけられた香水、楽器なしで奏でられる音楽――幻想と現実が交差する瞬間に浮き上がる謎を若き大学教授通称黒猫と付き人が解き明かしていく。美学理論を通しての謎解きは研究者ではない読者からしたらかなりの難解。だけどそれを上回るくらいに読ませる力がありますね。二人の会話の雰囲気も素敵。情景描写でさえ美学を感じるとても好みの文章でした。つらつらと語る中でも丁寧な謎解きに作者の筆力を実感。おかげで黒猫の美学講義をじっくり堪能出来ました。シリーズ読破決定。2015/03/28
kishikan
158
久々に僕好みのミステリ満喫!ポウはあまり読んでいないのですが、それはさておき、ポウの小説をモチーフに、黒猫があだ名の大学教授が美学という見地から美しく謎を解くこの小説はクリスティ賞に恥ぢない作品です。それに、付き人で語り手の院生の女性のキャラ、様々な登場人物の設定も印象深く、6話のストーリもヨーロッパの話と現代日本との根底部分のつながりで際立っていますね。「水のレトリック」「月と王様」は最高!教授と院生という関係や学術的謎解きという意味で、森博嗣さんのS&Mシリーズが脳裏に浮かびますが、同様に続編を希望!2012/02/10
のいじぃ
128
読了。日常の謎や事件をポゥの小説になぞらえて紐解く短編集。海外文学や古典文学には明るくないので、恐る恐る手に取りましたが、杞憂に終わりました。知識はあるに越したことはないと思いますが、問題部分を丁寧にに切り取り美学で考察していく様は難解なようでいて潔さをも合わせ持ち、考える余白の面白さと合間に当てられる2人の距離感や甘さに笑みがこぼれます。ただ、荒削りな感は否めず、起因となった人物が3人ほど似たような自己崩壊をしているのはもったいないと思いました。/壁の認識、東洋の仕切りと西洋の隔たり、紅、バンド、図像学2015/09/16
くろり - しろくろりちよ
115
ポオの作品をモチーフとしたミステリ短編。ひとつひとつが美しい。現実でありながら虚構の顔を見せ、虚構の仮面が剥がされたあとには美的な経緯が残る。『遊歩』と題されるよう、ふらりと黒猫について月夜の晩を歩いてみれば、現実と繋がった幻想的な世界に誘われる。これが黒猫のいう「美的」というものか。現代と古典ミステリの間をふらりとするような魅力的な読書散策。2012/09/19
財布にジャック
107
あの~、これって何かの講義なんでしょうか?ポオ、ニーチェ、ワーグナー、上田秋成、世阿弥、マラルメ、プニュエル、梶井、シュステマイオスって、教養の無い私には、かなり眠くなる講義でした。でも、ミステリーとしては案外いけてたかも知れません!高尚な薀蓄の割に、身近な事件や小さな謎解きで短編なので最後まで投げ出さずに読了しました。そして、登場人物のキャラがたってます!見目麗しい破天荒な天才キャラの「黒猫」が苺パフェ食べてるのを想像して、にやけてしまいました。2011/12/27
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