内容説明
急激な近代化が要請したシステム。近代天皇制の特殊な構造に迫る。帝国主義段階の後発国として、急速な近代化を迫られた日本。そのなかで形成された近代天皇制を現代的視点から捉え直し、新たな分析視角と方法を提示する。
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目次
近代天皇制研究の現代的意義をめぐって
第1部 日本ナショナリズムの特質と国民国家(近代日本における「民族」観念の形成―国民・臣民・民族 欧化主義ナショナリズムの一形態―徳富蘇峰の変遷から 日本型国民国家と近代天皇論)
第2部 近代天皇制の政治構造把握への基礎視角(近代天皇制国家試論 近代天皇制国家の基礎的社会関係の変容―行政支配と村落構造)
第3部 日本型立憲君主制と天皇(日本近現代史のなかの昭和天皇 昭和天皇の戦争責任の論じ方をめぐって 「新しい」伊藤博文像の問題点―日本型立憲制の把握をめぐって 明治憲法化の天皇の権力をいかに理解するか 日本型立憲君主制と昭和天皇)
感想・レビュー
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denz
2
『天皇の政治史』の著者の最晩年の論文集。やはり最も面白いのは、伊藤之雄さんとの論争であろう。ともに歴史学界にあった輔弼をうけても政治関与しないのが「立憲君主制」という誤った理解を批判し、その上で多元的な憲法体制と政治過程の中で能動的君主となりえない天皇という共通点があったにもかかわらず、感情的な行き違いから「喧嘩」となってしまった観がある。両者の相違は、正統性の根拠が天皇にあることを前提に政治過程をみる安田氏か、理論的裏づけよりも現実の政治過程で作られた法や状況を重視する伊藤氏か、というところか。2012/09/07