内容説明
妻と別居中の多聞を、三人の友人が「夜行列車で怪談をやりながら、さぬきうどんを食べに行く旅」に誘う。車中、多聞の携帯に何度も無言電話が……。友人は言った。「俺さ、おまえの奥さん、もうこの世にいないと思う。おまえが殺したから」(「夜明けのガスパール」)――他四篇、『月の裏側』の塚崎多聞、再登場。恩田陸のトラベル・ミステリー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
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「不連続の世界」、どうして『な』ではなくて『の』でつないでいるのか、何か気持ちの悪い不安定さを感じさせるこの作品。〈悪魔を憐れむ歌〉物理的には何も目に見えないのに、心の目に浮かぶのは薄ら寒いホラーの世界。〈幻影キネマ〉恩田さんの小説とは思えないほど懇切丁寧な説明っぷりに、放り出されない怖さ。〈夜明けのガスパール〉男4人のグダグダした酒飲み旅行が一転、一見普通の人だからこそ逆に怖い「人の裏側」。色々な者、物、モノを呼び寄せてしまう山崎多聞。日常に退屈した人は彼と友達になるのもいいかもしれません。2020/12/11
夢追人009
209
夢と現が入り混じる怪奇幻想ミステリー短編集。『木守り男』塚埼多聞にしか見えないコモリオトコの正体は謎ですが奇妙な夢等々のこぼれ話に心魅かれます。『悪魔を憐れむ歌』謎の女性歌手セイレンの真相は一応合理的ですが私は絶対に「山の音」を聴きたくないですね。『幻影キネマ』故郷で映画ロケを見ると必ず誰か人が死ぬというトラウマ。そうは言っても偶然だけでない運命を感じてしまいますね。『砂丘ピクニック』砂丘の消失は曖昧すぎて「何だかなあ」でした。『夜明けのガスパール』著者が企んだ騙しのテクニックに完全にしてやられましたね。2018/06/28
ちょこまーぶる
156
読後の感想は「????」って感じな一冊でした。何かもや~っと感で頭の中が一杯になってしまったんだけど、もしかしたら、それこそが作者の狙いだったのかもしれないと勝手に思うことにしました。それは、一遍一遍がその先を思い描かせてしまうほどのパワーをもっている作品であったように思えるからなんでしょうね。僕が一番好きになったのは「悪魔を憐れむ歌」で、死にたくなる音楽の話なんですが、以前フランスの「暗い日曜日」という放送禁止になった映画を観ていたからだと思いますが面白かったですね。2019/04/09
ダイ@2019.11.2~一時休止
152
連作短編集。トラベルミステリー。「月の裏側」の主人公だけどこんなキャラ設定だったか?。夜明けのガスパールを筆頭にやや強引な印象も・・・。2017/01/09
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
140
Kindleでの初めての読書。読みにくさは感じないし、旅行に行く時山ほど本を持っていかなくてもいいという利点が。それはさておき、本作。不思議な夢を見続ける男のつぶやいた「コモリオトコ」という言葉の謎。聞くと死ぬと言われる曲。謎の声。山の鳴る音。映画のロケに怯える青年。消える砂丘と消えた青年。真夜中の列車での怪談話。いつも思うが恩田陸はノスタルジーを感じさせる描写と、ゾクリとさせるのが上手い。今回も様々なところでぞくっと身の竦む思いを味わった。中でも山の鳴る音の話が一番気持ち悪かった。でも読後感は悪くない。2015/04/18




