内容説明
花森は編集長として、『暮しの手帖』をどのように作っていたのでしょうか。取材を通して花森という人物に興味を抱いた元新聞記者の酒井寛さんは、花森の没後『暮しの手帖』の編集部員やOBなどから聞き取りを重ね、その仕事ぶりを明らかにしていきます。さらに学生時代や、花森自身があまり触れなかった大政翼賛会時代の資料を発掘することで、社会に発信し続けた、ジャーナリスト・花森の仕事の全体像を浮かび上がらせています。
目次
編集長の二十四時間
大学卒業まで
大政翼賛会のころ
「手帖」創刊の前後
商品テストへの挑戦
写真帖から
一〓(せん)五厘の気概
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bluebird
10
書店の花森安治生誕100年フェアで氏が装丁した美しい本が並んでいたのですが、氏の人柄に興味を持っていたので、いちばん地味なこの評伝を購入。『暮しの手帖』の編集・記事の執筆・表紙の絵やタイポグラフィ・挿絵・写真撮影・誌面デザインまでほとんど全てに関わったマルチな才能を持った方ですが、その全てに独特の美学が貫かれており、とても素晴らしいのです。どんな仕事でも徹頭徹尾『暮しの立場』に立ち続けた氏の凄まじい人生に“人に伝える”ということと、“美しさ”についての根本を教わりました。全ての人に読んで欲しい1冊です。2012/03/22
アキナ
9
「とと姉ちゃん」の花山さんのモデルとなった花森さんについて。花山さんもすごいですが、花森さんはそれ以上の傑人でした。戦争の責任は女の人にはないのに、女の人はとても苦労している、だから女の人のためになるような雑誌が作りたいと、ペンを持ち続けた花森さん。まさに、剣よりも強いと言えるペンでした。2016/09/19
テキィ
6
花森さんが表紙の絵を描くときに「ぼくは画家じゃないから絵を描くのは苦しいんだ」というのが、僭越ではあるが痛いほどわかる。嬉々として絵を描けるほど絵はうまくないし、自分の絵を見てがっかりすることの方が多い。ほんとに切ないよ…2012/03/26
gotomegu
4
大橋鎭子さんの本を読んで、花森さんってどれだけすごいひとなんだろう?と興味を持ったので。考える、デザインする、がめちゃくちゃできてるひとだったんだろうな。それも、俯瞰して広い範囲でできていた。視座が高い。雑誌「暮らしの手帖」の編集長として戦後のおしゃれをひっぱり、文豪や有名人にエッセイを書いてもらう。商品テストは、実際に使ってみる作業がすごい。結果的に日本の工業製品を改善する大きなきっかけになった。見えてる景色が違うからこそ、まわりもなんとかついてきて、実現できたように思う。2022/01/05
つか
3
暮しの手帖を作った人はこんな人だったのか。広告を出さない雑誌にした意味、戦中戦後に何をしていたのか、どれも興味深くて面白かった。自分を貫く厳しさと、人を巻き込む柔らかさもあったんだろうなと思います。美しい暮しを再認識したい。2014/05/11