新潮文庫<br> 魚雷艇学生

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新潮文庫
魚雷艇学生

  • 著者名:島尾敏雄
  • 価格 ¥330(本体¥300)
  • 新潮社(2014/11発売)
  • ポイント 3pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101164045

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内容説明

予備学生として魚雷艇の訓練を受け、のちに特攻志願が許されて震洋艇乗務に転じ、第十八震洋特攻隊の指揮官として百八十余名の部下を引き連れ、奄美諸島加計呂麻島の基地に向かう。確実に死が予定されている特攻隊から奇跡の生還をとげた著者が、悪夢のような苛烈な体験をもとに、軍隊内部の極限状況を緊迫した筆に描く。野間文芸賞、川端康成文学賞を受賞した戦争文学の名作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

116
特攻隊の指揮官として加計呂麻島に赴任するまでの日々を描いた著者晩年の作品。文学の力、言葉の力をまざまざと感じることができる作品。戦争文学にありがちな悲壮感やヒロイズムといった感傷を排して、冷静で緻密な文体で戦争の中にある残酷性や異常性を浮き彫りにしている。この著者は言葉に対する感覚が鋭く、それは「魚雷艇」と「学生」という全く異質なものを組み合わせたタイトルからもうかがえる。本書はペンが剣に勝った一例だと思う。純度の高い散文で戦争の本質を描き出したこの作品は、文明が続く限り読み継がれていくに違いない。2014/12/14

長谷川透

30
凄い小説を読んだが、この凄みを上手く伝えられるか自信がない。大東亜戦争末期に特攻隊の訓練を経て後に隊長として派遣された著者の回想記と読んでいいだろう。驚いたのはこの小説が戦後四半世紀も経て執筆されたことである。詳細な記録の数々と鮮明な描写にも魂消るが“未来から見た過去”という視点が一切なく常に“未来を見つめる視点”で書かれているのだ。そして彼が見つめていた未来は“特攻の果ての死”である。幸運にも――と言っていいだろう――死を逃れた者がこの視点で小説を書いたということが凄いのである。上手く伝わっただろうか。2013/09/08

15
小説と思っていたのですが作者の戦争体験だったんですね。淡々と綴っていて戦争についての良い悪いも語ることなく、自身が世間を知った海軍という世界の中でのことを詳しく書かれています。よくぞここまで記憶してくれたと思います。震洋特攻隊員になり、さらに隊長になってからの心情は計り知れません。2014/07/27

ヘラジカ

12
普通5分前の心情を描写するにしても、他者に正確に伝わるよう書くことは困難を極めるだろう。それをこの作者島尾敏雄は、40年以上も前の記憶を驚くほど鮮明且つ精巧に再現しているのだ。読者は、島尾の経験や心的動向を洗練された文章を通じて自ら構築することにより、ヴィヴィッドな疑似体験を味わうに至る。作品に入りこむ、という感覚をこの本ほど如実に感じさせるものは多くないだろう。激しい戦争の隠された一面、特攻散華を間近に控えた者の心の内奥を覗くことが出来る貴重な一冊である。日本人にとってこれは残さねばならぬ一つの宝だ。2013/08/28

ハチアカデミー

11
最晩年の作品であるがゆえに、初期の戦争ものにある浮遊感やある種のシュールさが排除され、事実関係とその時の思いが回想される。初期作品との比較とその変化によって、作家の自覚はなしに、戦後という時代の移り変わりを掬い出すことには成功している。とはいえ、島尾であるからにして、期待をして読んでしまうと駄作と言わざるを得ない。淡々とした筆致が、とかく退屈なのである。かつて書かれた奄美での特攻寸前に至る以前の、まだ予備学生期を描いているが、どうしても奄美の話を期待してしまう。使い捨てされる兵士の葛藤は印象に残った。2014/02/01

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